TCFD提言に基づく情報開示(気候変動対応)

TCFD提言の支持と取り組み

当社グループは2021年2月にTCFD提言への賛同を表明し、再生可能エネルギー由来の電力への切り替えやSDGs貢献製品の売上比率アップに取り組むとともに、全社横断のタスクチームを編成し、TCFD提言に基づく情報開示を推進しています。

ガバナンス

当社グループは「サステナビリティ推進委員会」(委員長:社長執行役員)をSDGsを含む持続可能社会の実現に貢献する施策の立案・検討・決定を行う上位の委員会と位置付けています。同委員会は気候変動課題についてGHG削減目標の達成、リスクマネジメント、SDGs貢献製品・技術(気候変動課題への貢献を含む)の売上比率目標の達成などに責任を負っています。気候変動対応にかかわる施策執行を行い、その監督は取締役会が担っています。サステナビリティ推進委員会における気候変動課題についての定期報告や重要な決定事項は、社長執行役員から取締役会に報告しています。

継続的なTCFD(情報開示)および開示内容の充実化に取り組むために、サステナビリティ推進委員会下のリスクマネジメント委員会のもとに「TCFDタスクチーム」を設置しています。「TCFDタスクチーム」にかかるガバナンスの詳細については「サステナビリティ推進体制」を参照してください。

サステナビリティ推進体制

戦略(組織の事業・戦略・財務への影響)

TCFDについては、「TCFDタスクチーム」を中心に、2040年(長期)を想定した「気候関連シナリオ分析」を2021年度に実施し、気候変動に伴う潜在的なリスクと機会を抽出しました。その中で、比較的財務影響が大きくなるであろうと想定されるリスクと機会を以下のとおり特定しました。

2023年度には、「気候関連シナリオ分析」の「想定しうるシナリオ要素」について、情報のアップデートを行い、「当社グループ影響インパクト評価」に変更がないことを確認しました。

1.5/2℃シナリオ

<リスク>

カーボンプライスの引き上げによる操業コストと輸送コストの増加、低炭素技術の進展に伴う電力価格の上昇、バイオマス原料の高騰、またガソリン需要の減少に起因するナフサ価格上昇による各種プラスチック原料価格の上昇を重大リスクと特定しました。

<機会>

接触を避けたり、移動費用の負担増を避ける動機付けによって、人やモノの移動がデジタル手段に置き換わっていく社会環境変化は、半導体関連製品の販売拡大機会と捉えています。さらに3R+Renewable(持続可能な資源)関連製品、電池用部材や自動車軽量化素材などの電気自動車(EV)関連製品、そのほかにも常温保存や鮮度保持機能を有する食品包装用フィルムなど、低炭素社会/循環型経済を見据えた新規技術、新製品/サービスの開発を進め、新たな事業機会の創出につなげていきます。
1.5/2℃シナリオ分析
ドライバー 想定し得るシナリオ要素
(世の中の動き)
当社グループ影響
インパクト評価
リスク
機会
政策および法規制 カーボンプライスの引き上げ
・カーボンプライスの上昇
<1.5℃シナリオにおけるカーボンプライス(先進国)>
2030年:140USD/t-CO2
2040年:205USD/t-CO2
2050年:250USD/t-CO2
(2022年IEA World Energy Outlook)
・製造にかかるエネルギーコストの増加による操業コストの増加
リスク
・輸送コストの増加
リスク
市場 低炭素技術の進展
・再生可能エネルギー由来の電力需要の高まりによる電力価格上昇
・操業コストの増加
リスク
・バイオマス由来原料の需要の高まりによる原料の価格上昇
・バイオマス原料の高騰
リスク
低炭素技術の進展に伴うガソリン需要の減少
・ナフサはこれまでの副産品ではなく、主産品としての地位を得る
・ガソリンやディーゼル油とともに、ナフサは安定的に供給されるものの、価格は上昇
・ナフサの価格上昇による仕入・調達コストの増加
リスク
人やモノの移動のデジタル代替
・炭素税やGHG排出規制などの影響により人やモノが移動するための費用負担が大きくなる
・デジタルデバイスに搭載される半導体の需要増加
・半導体関連製品の販売拡大による売上増加
機会
低炭素技術の進展
・顧客からの資源循環の要求
・3R+Renewable(持続可能な資源)関連製品への切り替え加速
・3R+Renewable製品の早期上市による売上増加
機会
低炭素技術製品の需要拡大
・低炭素社会へとシフト
・炭素税やGHG排出規制が強化
・経済性を考慮したCO2輸送技術の開発やそのインフラ整備が進む
・低炭素製品/サービスの販売拡大による売上増加
機会
EV関連需要の拡大(電池用部材、自動車軽量化素材)
・自動車販売台数に占めるEVの割合は着実に増加し、EVの販売台数は増加
・EVを対象とした製品/サービスの販売拡大による売上増加
・自動車用軽量化素材の売上増加
機会
  • カーボンプライスの上昇による操業コストの増加:
    2040年度の当社グループのCO2総排出量を2023年度と同水準の約16万トン/年(Scope1+Scope2)、炭素価格を29,602円/t-CO2 (144円/ドル)と仮定すると、約46億円/年の負担増加と試算される。(昨年:約50億円/年)

4℃シナリオ

<リスク>

2050年目標「カーボンニュートラルに挑戦」に向け、再生可能エネルギー由来の電力導入を計画的に進めていく前提において、化石燃料(特に原油、天然ガス)価格の変動、GHG排出規制の強化に起因する電力価格高騰による操業コストの増加といった移行リスクの影響が、1.5/2℃よりも大きくなるものと想定しました。また気温上昇に伴うサイクロンや洪水などの異常気象、甚大な自然災害の発生やその頻度上昇による主要原料の供給停止や自社製造拠点の操業停止を起因とした売上減少を、重大な物理的リスクと特定しました。

<機会>

異常気象や甚大災害に強いレジリエントな都市づくりが推進され、建材向け製品および屋根用防水シート製品の需要増(機能例:軽量/高耐久/耐衝撃/高断熱・遮熱/耐火など)により、建材向け各種シート製品、防水シート製品/サービスの売上増加が見込まれます。気温上昇を含む厳しい環境変化により、食肉用家畜が減少し長期保存用食品/加工品包装材の需要増、また農作物の収穫量が減少し青果物包装材の需要増が見込まれ、各種包装フィルム製品の売上増加が期待されます。
気候変動に伴う疾病や移動制限に関しては、特に気温上昇に敏感な幼児、高齢者に対する地域病院や自宅での迅速診断(POCT:Point of Care Testing)の機会増大、さらには治療、投薬など在宅ケアの必要性増大が予想され、各種医療機器、診断薬を含むヘルスケア事業、医療機器・医薬品包装事業の拡大が見込まれるとともに、それら製品のさらなる性能向上、環境適応性を高めることにより、世界規模での社会課題解決に貢献していきます。 なお、2030年と2050年のGHG排出削減目標は、カーボンプライスの引き上げ、GHG排出規制の強化、化石燃料価格の変動など(これらは1.5/2℃または4℃シナリオにおいてリスクとして抽出)への対応策として取り組んでまいります。それら取り組みの前倒しを図り、長期的な移行リスクを短・中期の事業機会へと転換し、売上拡大を図ります。
4℃シナリオ分析
ドライバー 想定し得るシナリオ要素
(世の中の動き)
当社グループ影響
インパクト評価
リスク
機会
市場 化石燃料価格の変動
・原油、天然ガスは価格が上昇
原油 2021年: 69USD/barrel→2030年: 82→2050年:95
天然ガス 日本 2021年: 10.2USD/MBtu→2030年:10.9→2050年:10.6
日本は下落。ほかの地域は上昇
(2022年IEA World Energy Outlook)
  • MBtu:百万英熱量
・仕入・調達コストの増加による原料コストの増加
・製造にかかるエネルギーコストの増加による操業コストの増加
リスク
物理リスク:急性 サイクロンや洪水などの異常気象の重大性と頻度の上昇 サイクロン、集中豪雨、洪水、干害などの激甚化、頻度上昇
・主要原料サプライヤー:操業停止
・自社製造拠点(国内外):操業停止
・操業の一時停止による売上減少
リスク
「レジリエントな都市づくり」が推進される
→自然災害に強い建材、産業用資材の需要増
(要求機能例:軽量/高耐久/耐衝撃/高断熱・遮熱/耐火など)
・建材向け各種シート製品、防水シート製品/サービスの売上増加
機会
・食肉用家畜の減少 → 長期保存用食品/加工品包装材の需要増
・農作物の収穫量の減少 → 青果物包装材の需要増
・各種包装フィルム製品の売上増加
機会
感染症/気温上昇に伴う疾病・移動制限
・地域病院・自宅等での診断および遠隔診断の必要性増大
・環境変化に敏感な幼児・高齢者に対する医療機会(診断・治療)の増大 → POCT:Point of Care Testing/医療機器の需要増大
・ヘルスケア製品の販売拡大/売上増加
・医薬品パッケージの需要増
機会

新しい中期経営計画2024-26に基づき、2024年度もサステナビリティ推進委員会/リスクマネジメント委員会が中心となって(本シナリオ分析結果からのバックキャストによる)短期的な施策の具体化を図り、社内関係部門へ展開、スピード感をもって実行・推進しています。中・長期的には、マクロ環境変化を踏まえて適宜シナリオ内容や財務インパクトの見積もりを更新し、低炭素社会・循環型経済に貢献する新規技術、新製品の開発を通じて企業価値向上に取り組むとともに、それらの土台となる組織文化の変革、人材の強靭化などを盛り込んだ経営戦略の高度化を図ってまいります。

リスク管理

TCFD関連のリスクおよび機会の識別、評価、ならびに管理は、当社グループのリスクマネジメントプロセスに準拠し、実施しています。詳細については「リスクマネジメント」のページをご参照ください。

指標と目標

リスクに関しては、1.5/2℃または4℃シナリオにおいて抽出した、カーボンプライスの引き上げ、GHG排出規制の強化、化石燃料価格の変動などへの対応策として、2030目標「CO2排出量46%以上削減(2013年度比)」、2050目標「カーボンニュートラルに挑戦」のGHG排出削減目標を指標として進めてまいりましたが、2023年度に2030年目標を前倒しで達成(48%)することができました。

右図「GHG排出量“ゼロ”挑戦」にこれまでの実績値を記載しています。

下図「GHG排出量“ゼロ”挑戦」にこれまでの実績値を記載しています。

GHG排出量”ゼロ”挑戦

GHG排出量ゼロ挑戦

今回SBTi認定取得(1.5℃目標相当)を目指すため、2024年2月にSBTiへのコミットメントを行い、次のように目標を見直しましたので、
・2050目標「カーボンニュートラルに挑戦」
・2030目標「GHG排出量48%以上削減(2021年度比)」
これらを新たな指標として取り組んでまいります。

機会に含まれる低炭素社会・循環型経済に貢献する新規技術、新製品の開発に関しては、当社グループはSDGsを経営方針の一つとして取り入れることを2018年度に決定し、2019年度にSDGs貢献製品・貢献技術・貢献活動の認定制度を始めています。気候変動対応(温暖化対策や環境負荷低減など)への貢献はSDGsの目標を達成する機会の一部であり、事業を通じてサステナブルな社会へ貢献したいと考えています。

SDGsに貢献する製品・技術の提供を目指して、経営企画および研究開発部門などで研究開発、販売戦略などを検討し、具体的な目標と計画に落とし込み進捗管理を行っています。SDGs売上収益比率の目標値を2030年度70%以上、2023年度50%以上とすることをサステナビリティ推進委員会において決定し、活動を進めており、SDGs貢献製品の売上収益比率実績は、2022年度実績54.5%、2023年度実績61.9%となり、2023年度の目標を達成することができました。

今後、持続的な企業価値向上に資する一連の取り組みを通じて、外部環境や市況の変化を見据えながら定期的に気候関連シナリオ分析において特定したリスクと機会を確認・更新し、それらの影響度、財務インパクトの計数化、指標と目標の具体化・充実化を図りながら、適宜ステークホルダーの皆さまへ情報開示し、説明責任を果たしてまいります。

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