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MPS関係論文紹介

Gut–liver microphysiological systems revealed potential
crosstalk mechanism modulating drug metabolism

Kurniawan DA, Leo S, Inamatsu M, Funaoka S, Aihara T, Mizuno A, Inoue R, Sakura T, Arakawa H, Kato Y, Matsugi T, Esashika K, Shiraki
N, Kume S, Shinha K, Kimura H, Nishikawa M, Sakai Y. PNAS Nexus 3(2): 070, 2024.

https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgae070

© The Author(s) 2024. Published by Oxford University Press on behalf of National Academy of Sciences.
This is an Open Access article distributed under the terms of the Creative Commons Attribution License
(https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)

薬物代謝に関わるクロストークメカニズムの解明に向けて
~オンチップポンプ型多臓器MPSの薬物代謝研究での応用例~

MPSと住友ベークライトの取り組み

近年、創薬における動物実験代替法として生体模倣システム(Microphysiological System: MPS)が注目されています。当社は2022年よりAMED再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業(再生医療技術を応用した高度な創薬支援ツール技術開発)に参加し、東海大学マイクロ・ナノ研究開発センター木村啓志教授が考案した多臓器の連結培養が可能な臓器ブロック型ユニバーサルプラットフォームとなるスターラ式オンチップポンプ型多臓器MPSを開発し、バイオステラ™ プレートという名称で試験販売を開始しました。今回は、本MPSデバイスを使用した東京大学との共著論文をご紹介いたします。

論文背景

小腸と肝臓は腸肝循環と呼ばれる経路で相互に繋がっており、経口薬の代謝において重要な役割を果たしています。小腸細胞と肝臓細胞の共培養実験は、肝臓の薬物代謝が増加することが示されていますが、その相互作用メカニズムはまだ完全には解明されていません。本研究では、キメラマウスから採取した初代ヒト肝細胞(PXB細胞)とヒトiPS細胞由来の小腸細胞を使用し、MPSデバイスでの共培養系を構築し検討しました。

MPSデバイス共培養系

右の図のように本MPSデバイスは外部モーターによってマイクロチャンネル内のスターラポンプが磁気的に回転し、Well間の培地が灌流する仕組みです。
1系統の左WellにPXB細胞を播種し、小腸細胞が入った培養インサートを右側のWellに置き共培養を開始しました。灌流速度は35 μL/分となるように回転数を設定し、3日間共培養を行いました(培地交換なし)。
本研究ではMPSデバイスのウェル底材に薬物の吸着が少ない酸素透過性膜(PMP)を用いて細胞への酸素供給を行いました。

共培養の結果

共培養と酸素供給により、PXB細胞のアルブミン分泌量と複数種のCYP活性が増加しました。小腸細胞のバイリア機能も共培養系で維持されたことを確認しました。また酸素供給ありで共培養したPXB細胞ではアラキドン酸代謝過程に関連する遺伝子の発現が有意に上昇したことがRNAシーケンシングの結果でわかりました。アラキドン酸処理したPXB細胞は共培養系同様、CPY活性の増加がみられました。
上記より小腸細胞はPXB細胞から分泌された胆汁酸の刺激を受け、リポタンパク質を放出し、それがまたPXB細胞に取り込まれてCYP活性を増強させると推測されています。

(詳細は論文をご参照ください)   

バイオステラ™ プレート 品番:BS-X9607、試験販売品

透明化することで流路の視認性が向上しております。また、流路形状を見直すことで送液性能を向上しております。

※ 本プレートの培養ウェルは通常のポリスチレン底であり、上記論文で使用された酸素透過性膜(PMP)は搭載しておりません。