成長分野に注力し、揺るぎない価値の礎をつくる
瀧口:
住友ベークライトは新中期経営計画において、新たな3つの事業領域を定められましたが、それぞれがどのような事業か、お聞かせいただけますか。
藤原:
ICT、モビリティ、ヘルスケアの3領域は、既存事業の優位性を生かせる点や、今後社会からのニーズの高まりが予測できることから重点事業領域分野としました。
ICT分野は技術の進歩とともに市場全体が成長しており、自社技術が広く適用できます。今後はエネルギー効率化へのニーズが高いパワー半導体やAIに代表される先端半導体などに貢献する素材開発に注力します。モビリティ分野では電動車のバッテリー用部材に高い耐熱性や絶縁性が求められ、この点でも当社グループには、フェノール樹脂成形材料や絶縁用ポリカーボネートで技術優位性があります。車の市場の拡大にはまだまだ期待しています。ヘルスケア分野では低侵襲治療に注目しています。患者は高齢になるほど身体への負担が大きい手術がしづらくなります。同じ手術でも、開腹手術と腹腔鏡手術では負担がまったく違います。そこで、当社にしかない価値を持ったステントやカテーテルといった器具を提供することで、患者にやさしい治療に貢献していきます。最近では、BMI(Brain Machine Interface)という分野でもプロジェクトを立ち上げています。
瀧口:
ヘルスケア分野はクオリティオブライフの増進に期待できそうですね。高齢化が進む日本や先進国ではニーズが高そうです。BMIの分野では、どのような未来を目指されているのでしょうか。
藤原:
BMIは簡単に言えば、脳と機械を接続し思考に基づく情報伝達を可能にする技術ですが、目標は、我々のデバイスをつけていただくことで、発話困難な方や寝たきりの方などの脳波から何を考えているかが分析できるようになることです。本当に夢の夢ですが。
瀧口:
VUCA(物事の不確実性が高く、将来予測が困難)の時代といわれますが、3つの事業セグメントでポートフォリオを組まれていると、すべてが一度に打撃を被ることは少なそうですね。
藤原:
おっしゃるとおりです。私は入社して40年になりますが、3事業セグメントが一度に不調になったことはありません。