SPECIAL INTERVIEW特別インタビュー

代表取締役社長藤原 一彦
経済キャスター瀧口 友里奈

お客さまの満足から感動へ。
培った技術とたゆまぬ挑戦で、
環境・
社会価値の創造への道筋をつくる。

「情報の力で社会のイノベーションを加速する」を旗印に、金融、経済、ICTと難解な分野で研究・活動する経済キャスターの瀧口友里奈さんをインタビュアーにお迎えし、住友ベークライトの重点領域と新ソリューション創造に向けた取り組みについて、藤原社長に語ってもらいました。

住友ベークライト株式会社 代表取締役社長 藤原 一彦
住友ベークライト株式会社 代表取締役社長
藤原 一彦
1980年住友ベークライト入社。 2003年バイオ製品開発プロジェクトチームリーダー、 2007年S-バイオ開発部長、2009年S-バイオ事業部長、 執行役員、2013年常務執行役員、2014年取締役、2016年専務執行役員、2018年代表取締役社長に就任。
経済キャスター 瀧口 友里奈
経済キャスター
瀧口 友里奈
現在、経済番組のキャスターのほか、東京大学工学部アドバイザリーボードメンバー、SBI新生銀行 社外取締役を務める。東京大学卒。在学中にセント・フォースに所属して以来、経済キャスターとして活動。テレビ東京『ニュースモーニングサテライト』や日経CNBC等にて、経済分野、特にイノベーション・スタートアップ・テクノロジー領域で経営者やトップランナーを取材。東京大学大学院修士課程に在学中。“情報の力で社会のイノベーションを加速する”ことを目指し、株式会社グローブエイトを設立し、企業・アカデミアと、社会とのコミュニケーションコンテンツの制作プロデュースを行う。書籍『東大教授が語り合う10の未来予測』を編著。日米欧・三極委員会日本代表。世界経済フォーラム ヤング・グローバル・リーダーズ2024(YGL)に、日本人のアナウンサー・キャスターとして史上初めて選出される。

成長分野に注力し、揺るぎない価値の礎をつくる

瀧口:

住友ベークライトは新中期経営計画において、新たな3つの事業領域を定められましたが、それぞれがどのような事業か、お聞かせいただけますか。

藤原:

ICT、モビリティ、ヘルスケアの3領域は、既存事業の優位性を生かせる点や、今後社会からのニーズの高まりが予測できることから重点事業領域分野としました。
ICT分野は技術の進歩とともに市場全体が成長しており、自社技術が広く適用できます。今後はエネルギー効率化へのニーズが高いパワー半導体やAIに代表される先端半導体などに貢献する素材開発に注力します。モビリティ分野では電動車のバッテリー用部材に高い耐熱性や絶縁性が求められ、この点でも当社グループには、フェノール樹脂成形材料や絶縁用ポリカーボネートで技術優位性があります。車の市場の拡大にはまだまだ期待しています。ヘルスケア分野では低侵襲治療に注目しています。患者は高齢になるほど身体への負担が大きい手術がしづらくなります。同じ手術でも、開腹手術と腹腔鏡手術では負担がまったく違います。そこで、当社にしかない価値を持ったステントやカテーテルといった器具を提供することで、患者にやさしい治療に貢献していきます。最近では、BMI(Brain Machine Interface)という分野でもプロジェクトを立ち上げています。

住友ベークライト株式会社 代表取締役社長 藤原 一彦

瀧口:

ヘルスケア分野はクオリティオブライフの増進に期待できそうですね。高齢化が進む日本や先進国ではニーズが高そうです。BMIの分野では、どのような未来を目指されているのでしょうか。

藤原:

BMIは簡単に言えば、脳と機械を接続し思考に基づく情報伝達を可能にする技術ですが、目標は、我々のデバイスをつけていただくことで、発話困難な方や寝たきりの方などの脳波から何を考えているかが分析できるようになることです。本当に夢の夢ですが。

瀧口:

VUCA(物事の不確実性が高く、将来予測が困難)の時代といわれますが、3つの事業セグメントでポートフォリオを組まれていると、すべてが一度に打撃を被ることは少なそうですね。

経済キャスター 瀧口 友里奈

藤原:

おっしゃるとおりです。私は入社して40年になりますが、3事業セグメントが一度に不調になったことはありません。

住友ベークライト株式会社 代表取締役社長 藤原 一彦経済キャスター 瀧口 友里奈
探索マップ(2024年度版)

顧客の真のニーズを探り、新たなプロダクトを生み出すしくみ

瀧口:

重点事業領域とされた3領域から生み出される新製品は、まさに「プラスチックの可能性を広げる」を実現するプロダクトだと思いますが、開発が進行中の新たなプロジェクトもあるのでしょうか。

藤原:

プロジェクトはいくつか走り出しています。プロジェクト自体は3年間ほど試行錯誤をして事業化の目途がつけば、開発部や組織に昇格します。一つの成功事例は、先ほどお話ししたパワーモジュールで用いられる放熱材料の開発です。顧客への販売も決まり、次の中期経営計画期間での販売拡大を目指しています。また、私が特に期待しているのは、2024年度に事業開発部にした光回路材料です。生成AIや自動運転などの用途で高速・大容量・低消費電力といったニーズが高まっていることから電気回路と光回路のハイブリッドが主流になっていくとみており、部材などを他社と共同で開発しています。ほかにも、SDGsの観点から取り組んでいるのは、リサイクルです。特に我々が得意とする熱硬化性プラスチックはいったん固まると素晴らしい強度を発揮しますが、反面リサイクルが困難です。循環型社会の実現のため、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクル技術の開発もぜひ実現したいテーマです。

住友ベークライト株式会社 代表取締役社長 藤原 一彦 / 経済キャスター 瀧口 友里奈

瀧口:

ご紹介いただいたプロジェクトの発展や、新商品・新ソリューションの持続的成長を目指して、長期的な視点で取り組んでいらっしゃることはありますか。

藤原:

会社の持続的成長には、「新製品」「新用途」「新顧客」が必要と従業員には繰り返し伝えています。これらを担える人材を育成するために、どんどん挑戦を促しています。そのなかで研究者の役割は新製品ということになりますが、成長性があり、かつ環境・社会価値の高い研究テーマを見つけられるかが肝要です。今後は研究開発のリソースも拡充していきます。技術ベースの会社なので、ある程度長い目で見て根気強くやっていきたいです。
実は将来の市場ニーズは、未来を見据えて研究をしている方々から生まれてくることが多いのです。そのため、当社グループでは技術的に先進的な研究をおこなっている大学や企業との協業を進めています。住友ベークライトだけではできることが限定されますし、新しい研究をしている方々と一緒に開発することで、私たちにも見えてくることが多いからです。

住友ベークライト株式会社 代表取締役社長 藤原 一彦 / 経済キャスター 瀧口 友里奈
プロジェクトから事業開発部へ / 現在推進中のプロジェクト

大切なのは挑戦者を讃える風土、堂々と失敗し、次の挑戦に生かしてほしい

瀧口:

新規プロジェクトには、「One Sumibe活動」が軸になったものもあると伺っていますが、どのような活動なのでしょうか。

藤原:

「One Sumibe活動」は、もともと事業セグメントの垣根を越えて、住友ベークライトとして、顧客にソリューションを提供する活動で、毎年、重点顧客を決めて全社でお付き合いをしていきます。これまでは事業部ごとに縦割り感がありましたが、それを「横串」でつなぐスタイルが強みです。大企業になるほど、一事業部では開拓しきれない多面的なニーズがあるものです。そうしたお客さまに、当社グループ全体のソリューションを提供していくのです。たとえば、顧客事業所でのプライベート展示会を開催させていただいたり、一緒に新たなテーマの探索を行ったりと、当社の強みが最大限に生かせる活動になっています。

瀧口:

従業員の方の個性を生かしながら、事業部間の横の連携も推進されているということですね。非常に大事な取り組みだと感じます。

藤原:

余談ですが、本社では従業員間の交流を深めるために「ワイン・スミベ会」というものを企画する人も出てきました。直接仕事とはかかわりませんが、大事なのは「ワイン会をやろう」という発想とそのアイデアを受け入れる風土です。ボトムアップの活動は会社の活性化には欠かせません。会社が活性化するための提案を若い人たちがしてくれるようになったことが、とてもうれしいです。

住友ベークライト株式会社 代表取締役社長 藤原 一彦

瀧口:

藤原社長が、企業におけるボトムアップの活動を根付かせるために、必要だと考えていることはどのようなことでしょうか。

藤原:

企業の意思決定は最終的にはトップダウンです。しかし、ドラマのセリフではありませんが、「事件は現場で起こっている」。社長室にこもっていても実態は見えませんし、提案もできません。ですから、現場にいる従業員の皆さんには企画力・提案力のレベルアップを私は求めています。そういう方々が、「この企画を実現したいので、こうしてほしい」と言えば、会社が実現するための環境を準備します。上から押し付けるようなスタイルを変えていきたいです。
そして、失敗を恐れないことも大切です。どんな試みも初めからうまくはいきませんし、失敗したからといって会社はつぶれません。自分で提案して実行し、堂々と失敗してください。そして、次の挑戦に生かしてほしい。こうした「挑戦者を讃える風土」が根付くと、企業の創造性は高まると考えています。

瀧口:

日本は失敗を恐れる風潮が強いといわれますが、「失敗してもいい」と言われると挑戦する勇気が湧いてきます。今、働き手不足に悩まれている企業が多いですが、「One Sumibe活動」や風土の醸成を通して、従業員の皆さんがやりがいを持って長く働けるのではと、お話を伺っていて思いました。

経済キャスター 瀧口 友里奈

藤原:

今は新入社員であっても、自分の市場価値を常に意識している時代です。住友ベークライトにできるだけ残って、定年まで働いてほしいというのが私の願いですが、それはもう古いのかもしれません。とはいえ、会社は一日の大半を過ごす場所ですので、やはり楽しく意欲的に仕事をしてもらいたいです。

住友ベークライト株式会社 代表取締役社長 藤原 一彦経済キャスター 瀧口 友里奈

プラスチックで培った技術を駆使し、満足から「感動」へ

瀧口:

私自身も「社会のイノベーション加速」を重要なテーマの一つとして活動しているため、御社の活動に興味があります。住友ベークライトの生み出したイノベーションが、社会実装された例があれば教えてください。

藤原:

近年、社会実装された例ではスキンパックがあります。お肉の消費期限を2週間程度延長でき、牛肉はうまみ成分が増して、おいしくなります。まだ、限られた店舗でしか使用されていませんが、確実に市場が成長しており、物流問題や共働き世帯の増加でますますニーズが高まるとみています。

住友ベークライト株式会社 代表取締役社長 藤原 一彦

瀧口:

大きく変化する時代の中で、住友ベークライトが持つ強みをどのように生かせると感じておられますか。また、優先課題などがあればお聞かせください。

藤原:

住友ベークライトの競争力の源泉は、長年培ってきたプラスチックに関する材料設計、加工・複合、評価解析などの技術です。そこで優先されるのは環境対応です。そのためには新しい素材がますます求められます。たとえば、当社グループの製品である医薬品包装フィルムでは、一つのフィルムに種類の違う6層のプラスチックが重なっている製品があります。しかし、リサイクルには1種類の素材だけである方が望ましいため、6種類で出していた機能を1種類でできないかと、日々研究を続けています。こうしたアンメットなニーズがそれぞれの領域に存在するため、顧客との関係からいち早く見つけ出すことが重要です。
また、当社グループにはさまざま事業があり、そこで培ってきた技術や顧客との信頼関係も強みといえます。従業員一人が実直に顧客の要求を聞いて、ニーズに合ったものを開発・提供しています。これまで25年間CS活動を続け、お客さまに満足してもらう活動は一定のレベルに到達しました。そこで、今年からは「お客さまに感動を与える」方向性を打ち出しました。満足は当たり前で、感動までしてもらって、はじめて私たちの製品が選んでいただけるということです。

瀧口:

ここまでお話を伺っていて、半導体、電気自動車、医療機器など、常に時代の中心を捉えて社会的意義がある事業活動をされていることがわかりました。今後、住友ベークライトは、お客さまの課題解決のためにどのような役割を果たしたいとお考えですか。

経済キャスター 瀧口 友里奈

藤原:

プラスチックは現在、環境面でネガティブな見方をされることが増えていますが、社会課題を解決していくためには不可欠なものだと思います。環境価値、社会価値の創造は経営の重要課題として一番に取り上げましたが、この点を意識して、より付加価値の高い製品を開発していきたいです。
お客さまのニーズをアンメットな領域まで把握して、満足以上の感動を与えるのが私たちの役割です。そして、従業員の皆さんには、当社グループで働くことで人間力を向上してもらい、働き方や処遇については会社がさらに改善し、皆が生き生きと働ける会社を目指したいです。

住友ベークライト株式会社 代表取締役社長 藤原 一彦経済キャスター 瀧口 友里奈

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