次世代パワー半導体向け高熱伝導シンタリング銀ペーストのサンプル出荷を開始

2024年7月16日


住友ベークライト株式会社(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 藤原一彦)は、次世代パワー半導体向け高熱伝導シンタリング銀ペースト150 W/m・Kのサンプル出荷を開始し、2024年12月の量産化を目指しています。本製品の使用により、環境負荷の大きい鉛半田(鉛含有量37%)の置き換えが可能となります。さらに、SiCパワー半導体に適用されることでパワー半導体の機能を高めながら、小型化や部品削減に貢献します。


開発の背景

近年、パワー半導体は高電力を制御するための電子デバイスとして、電気自動車(EV)などのコンバータ/インバータや太陽光や風力の発電システム、新エネルギー向けなど採用分野は多岐にわたり、市場の拡大が期待されています。このような背景から、Siよりも優れた特性を持つSiCパワー半導体の需要が伸びています。
SiCパワー半導体は、高電力で使用されることが多く発熱量が高い特性がありますが、SiCは熱伝導性が高い素材であり、熱を効率的に拡散することが難しいという課題があります。このため、基板とチップを接合するダイアタッチ材料には高い放熱性が求められます。従来、ダイアタッチ材料には鉛半田が多く適用されていますが、半田は製造過程で発生する廃棄物や廃液に鉛などの有害な物質や重金属が含まれることがあり、環境負荷が大きくなります。また、半田の熱伝導率 (25~60W/m・K)ではSiCパワー半導体に求められる放熱性が不十分であるなど課題があります。その課題を解決するため高熱伝導材としてシンタリング銀ペーストが注目されており、市場の拡大が期待されています。
住友ベークライトはシンタリング銀ペーストの高熱伝導化と高信頼性の両立に取り組んでおり、150W/m・Kの熱伝導率を有する高放熱セミシンタリング銀ペーストの開発に成功し、サンプル出荷を開始しました。


パワー半導体向け高熱伝導シンタリング銀ペースト150 W/m・Kについて

当社の樹脂配合技術により開発した銀ペーストは柔軟性に優れ、かつ高焼結促進性を兼ね備えた樹脂と銀を組み合わせています。この樹脂技術により、150W/m・Kという高い放熱性を有しながら、無加圧工程での使用が可能であり、接合部材へのダメージ低減やバッチ処理による時間短縮が期待されます。さらに本製品は硬化温度が従来のフルシンタリング材よりも低く、硬化時の材料間の線膨張係数の差によるストレスが低減されることや、高さの異なる複数部材への接合作業性に優れており、半田やフルシンタリング材の代替として、パワー半導体のチップや冷却器の接合用途に適用が可能です。
また、ナノ銀よりも安価なマイクロ銀でも高い焼結性を達成しつつ冷熱温度サイクルの耐久性で高い信頼性を担保することができます。

使用が想定される部位    

本製品使用のメリット

  • パワー半導体等に使用される、鉛半田(鉛含有量37%)の代替で鉛削減が可能
  • フルシンタ材からの代替において、低温接合温度による線膨張差ストレス低減が可能
  • 高さの異なる複数部材への接合作業性改善
  • SiC半導体への適用により、機能を高めながら、製品の小型化や部品削減を実現
項目 半田 銀フルシンタリング材 銀セミシンタリング材
必要厚み @チップ接合 20um 70um 20um
接合温度 225度 250度 200度
加圧要否 不要 不要
部材ダメージ 小さい 大きい 小さい
コスト/1PKGあたり* < <1 >5 1

* 銀セミシンタ材を1とした際の指標
    - 品番特性は代表値
    - 冷却器接合材:「銀フルシンタ>半田>銀セミシンタリング材」の順で必要厚みが大きくなる傾向


樹脂技術・銀焼結技術による高熱伝導率、高放熱化を実現


「高熱伝導材 開発の変遷」

高熱伝導材 開発の変遷

今後の計画について

パワー半導体向け高熱伝導シンタリング銀ペースト150 W/m・Kついては、2023年9月からお客様にサンプルの供試を開始し、顧客での評価を進めており、2024年12月の量産実績化を目指しています。


関連情報




本件に関するお問い合わせ

住友ベークライト株式会社 情報通信材料営業本部
TEL: 03-5462-4015