2024年5月27日
住友ベークライト株式会社(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 藤原一彦)は、次世代SiCパワーモジュール向け高Tgエポキシ封止材料を開発いたしました。当社の樹脂によってパワーモジュールの耐熱性が向上するため、パワーモジュールの小型化や機能向上に貢献し、SiCパワーモジュール用樹脂の世界標準を目指します。
開発の背景
近年、カーボンニュートラルの目標を掲げ、有限のエネルギーをいかに効率よく使用するか、ということが世界的に大きなミッションとなっています。パワーモジュールは、インバータ、コンバータ、電源ユニットなど、様々な電子機器に組み込まれており、電流、電圧を制御する役割を果たしています。
パワーモジュールは、電力を効率的に使用することが可能になり、エネルギーの消費を抑えるとともに、機器の性能を最大限に引き出すことを担う重要なデバイスです。特に自動車業界では、BEV(Battery Electric Vehicle)の需要の高まりによって、バッテリー供給電圧が高まる流れで、パワーモジュールのチップの主要素材はSi(Silicon)からSiC(Silicon Carbide)に置き換わり、更なる機能向上が進められています。
次世代SiCパワーモジュールの課題
自動車走行中のCO2削減効果のあるxEV*が世界的に増加する傾向にあり、バッテリーの高電圧化に対応できるパワーモジュール用チップの主要素材としてSiCが注目されています。長らく使用されてきたSiに比べSiCは、エネルギー効率が良く、高電圧耐性、高温耐性などの優れた機能を有します。これらの機能を十二分に発揮するために半導体封止材の更なる高耐熱性が求められています。
* xEV=ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)などの総称
次世代SiCパワーモジュール向け高Tgエポキシ封止材料について
エポキシ樹脂のTg(ガラス転移温度)は、樹脂の種類によって異なり、樹脂の架橋密度を向上させることでTgを上昇させることができますが、一般的には約100℃から200℃程度になります。今回開発した次世代SiCパワーモジュール向け高Tgエポキシ封止材料は、エポキシ樹脂を高Tg化するために、通常の架橋密度向上に加えて、樹脂の主鎖骨格を剛直化することによって、240℃に達するガラス転移温度を実現し、さらに当社独自の樹脂の配合とフィラーの組み合わせのアプローチによってエポキシ封止材料化に成功致しました。 また、一般的な問題としてエポキシ樹脂の高Tg化は、樹脂が硬く、脆くなるトレードオフが懸念されますが、本製品は、エポキシ樹脂と反応する硬化剤の種類の最適化によって、硬化後の物性として硬く・脆くなる現象を避けることができ、パワーモジュールの組み立てプロセス中に不具合が生じない応力緩和性能を有することが確認できました。 |
スミコン®EME New Grade |
参考: 高Tgエポキシ封止材料 開発状況
項目 | 単位 | G720シリーズ | G780シリーズ | New Grade |
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ステータス | - | 量産 | 量産 | サンプル |
レジン系 | - | 従来エポキシ | 新規エポキシ1 | 新規エポキシ2 |
Tg | °C | 195 | 195 | 240 |
重量減少※250°C/1000hr | % | >2 | <2 | <2 |
Ni密着※相対値 | - | 1.0 | 1.6 | 1.3 |
絶縁破壊強さ | kV/mm | 21 | 22 | 22 |
今後の計画
次世代SiCパワーモジュール向け高Tgエポキシ封止材料(New Grade)については、お客様の評価を想定したサンプルの提供を開始し、2025年度からの量産化を見込んでおります。
今後も当社は、パワーモジュールの小型・高機能化、さらにはパワーモジュールの構造のイノベーションに対して材料から貢献していきます。
関連情報
本件に関するお問い合わせ
住友ベークライト株式会社 情報通信材料営業本部
TEL: 03-5462-4015