ミリ波誘電率測定法の開発について

住友ベークライト株式会社
住ベリサーチ株式会社
2022年06月29日


住友ベークライト株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:藤原一彦)と住ベリサーチ株式会社(本社:栃木県宇都宮市、代表取締役社長:長木浩司)は、「ミリ波誘電率測定法」として従来よりも薄い平板についても測定可能な平衡型円板共振器を開発し、その特許群を整備しましたのでお知らせいたします。
今後、住ベリサーチにて誘電率測定サービスを拡充してまいります。


背景

近年情報通信は、AIやIoTといった技術的な進展やコロナ禍による社会環境の変容により、大容量化・高速化が進んでいます。一般に通信では大容量化や高速化を実現するには高周波の電波を利用する必要があります。

従来あまり利用されていなかったミリ波は、第5世代移動体通信システム(5G)や衝突防止レーダーなどの広がりにより、利用が拡大しています。このような高い周波数領域を使用するには、AiP、RFモジュール、メモリーなどのデバイスにも高周波アプリケーション専用の設計が必要になります。そして高周波アプリケーション向け電子材料に対しては、低消費電力、低遅延の実現のために低誘電率、低誘電正接が求められています。

Society 5.0(仮想空間と現実空間の融合)のイメージ図

Society 5.0(仮想空間と現実空間の融合)のイメージ図

開発技術

ミリ波帯における低誘電率低誘電正接の材料の誘電特性を測定する方法として、IEC 63185(平衡型円板共振器法)が知られています。平衡型円板共振器法は、ミリ波帯を含む周波数10GHzから110GHzの測定をする事が出来ますが、薄いサンプルの測定が難しいという課題がありました。

それに対し当社グループでは、平衡型円板共振器に用いる接地導体の形状接地導体を加圧する方法や加圧する位置、励振用同軸線の調整方法を独自に開発し、精密な平衡型円板共振器を実現することで、薄いサンプルにおいても誘電特性を精度よく測定できるようになりました。この技術は特許出願をしており、一部は登録されております。

Society 5.0を実現するデバイス例(イメージ)

Society 5.0を実現するデバイス例(イメージ)

特許番号 発明の名称
特許第6941482号 誘電特性測定治具、誘電特性測定装置および誘電特性測定方法
特許第7054610号 誘電特性測定治具、誘電特性測定装置および誘電特性測定方法
特許第7047157号 誘電特性測定治具、誘電特性測定装置および誘電特性測定方法
特開 2022-86875 円板共振器、誘電特性測定装置および誘電特性測定方法

測定事例

開発した平衡型円板共振器について低損失基板向け樹脂を誘電体に設置した場合の共振特性と、その共振特性を元に低損失基板樹脂の10GHz~110GHzにおける誘電特性を算出した結果を示します。ミリ波帯において低損失基板の誘電特性を精度よく測定できていることを確認しています。

平衡型円板共振器の周波数依存性(共振特性)の測定例

平衡型円板共振器の周波数依存性(共振特性)の測定例

平衡型円板共振器法による低損失基板樹脂の
誘電特性周波数依存性の測定結果

平衡型円板共振器法による低損失基板樹脂の誘電特性周波数依存性の測定結果

今後の予定

本技術を活用し、当社グループの高周波アプリケーション向け電子材料の開発を促進することに加え、住ベリサーチでの誘電率測定サービスを拡充により、社会に貢献してまいります。

ミリ波評価技術


IEC 63185: Measurement of the complex permittivity for low-loss dielectric substrates balanced-type circular disk resonator method(低損失誘電体基板の複素誘電率の測定: 平衡型円板共振器法)



本件に関するお問い合わせ

住ベリサーチ株式会社 営業部

Tel:03-5462-7051