2022年1月31日
住友ベークライト株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:藤原一彦)は、優れた機械強度と電気絶縁性を有し、かつ射出成形に対応した熱硬化樹脂ガラス長繊維成形材料を開発いたしました。金属・セラミックに代わる新しい樹脂素材として、これまで樹脂化が出来なかった部品の樹脂化を実現するとともに、軽量化等により環境負荷低減に貢献します。
開発の背景
温室効果ガス削減によるカーボンニュートラル達成に向け各産業で対応が進む中、製品の製造から使用環境時までの消費エネルギー低減が求められています。例えば自動車では電動化のため、部品の高電圧に伴い使用環境温度の上昇、同時に小型化・軽量化の必要性も高まっています。このような背景の中、金属・セラミックに代わる軽量、耐熱、高絶縁、設計自由度、形状自由度、経済性を有する新たな高性能樹脂素材へのニーズが高まっています。これらニーズに対して、高温環境下でも優れた機械特性(耐衝撃性・高靭性・高強度・高剛性)を発揮し、かつ電気絶縁性にも優れるとともに、形状自由度や経済性の観点から射出成形対応の熱硬化性樹脂長繊維成形材料を開発いたしました。この開発材料は、当社独自の乾式製法による長繊維化製造技術と処方配合技術、さらに射出成形技術開発により成形品中に繊維を均一分散させながら繊維長を2~3mm程度残存(弊社従来短繊維材の10倍程度の長さ)させることで、上記に示すような優れた特徴を発現することを可能としました。
熱可塑性樹脂を含めた従来樹脂素材では出来なかったモーター関連部品、バッテリー関連部品、充電システム関連部品の金属やセラミック部材を樹脂化し、軽量化や製造時消費エネルギー削減を通して、二酸化炭素排出量をアルミニウムダイカスト比50%減、セラミック比80%減を目指すことで環境負荷低減に貢献し、将来的に10億円の売り上げを見込んでいます。
熱硬化性樹脂長繊維材製法
長繊維材は、熱硬化樹脂粉末を連続繊維に含侵させたのち、チョップ(切断)することで生産されます。「材料ペレットのチョップ長」=「材料中の繊維長」であるためチョップ頻度で材料繊維長を制御でき、かつ溶剤を使用しない乾式製法であるため生産される材料に粘着性や溶剤臭はありません。
技術の位置づけと特長
射出成形は成形サイクルが短いため、成形時消費エネルギー、成形コストの点で優れていますが、従来の射出成形用の短繊維ガラス強化成形材料ではペレット中(材料中)の繊維が短く、またその後開発された熱可塑ガラス長繊維材では成形中のせん断力により繊維が破断し、成形品中に繊維を長く残すことが困難でした。当社の開発材は熱硬化性樹脂の溶融特性を活用することで成形品中に2~3mmの長い繊維を残すことが可能です。耐衝撃性などの成形品高性能化を射出成形で実現することができます。
熱硬化性樹脂長繊維材ラインナップ
適用部品想定例
■フェノール樹脂長繊維材
耐熱性・剛性に優れるフェノール樹脂をベースとしています。高温域まで熱可塑性樹脂を凌駕する耐衝撃性・強度・剛性を有し、アルミダイカスト代替可能な新しい複合材料です。衝突安全性、石跳ね対策、高温での動作が求められる電動モーター部品筐体やブラケット等の自動車部品の樹脂化を想定しており、アルミダイカスト部品に対して、3割程度の軽量化が可能です。 |
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■ジアリルフタレート樹脂(DAP)長繊維材
絶縁性・耐湿性に優れるDAP樹脂をベースとしています。耐トラッキング性(CTI)600V以上の電気絶縁性、熱可塑以上の高衝撃・耐熱性を有した新しい電気絶縁用複合材料です。耐衝撃性、高電気特性が求められるEV充電コネクターやインシュレータ、セラミック碍子の樹脂化を想定しており、セラミック部品に対して3割程度の軽量化が可能です。 |
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関連情報
本件に関するお問い合わせ
住友ベークライト株式会社 高機能プラスチック製品事業本部 成形材料・成形品営業部
Tel:03-5462-4101