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今月ご紹介するJA幕別町は農業の盛んな十勝地方の中・南部に位置し、多様な農作物を生産しています。小粒ながらスイーツのような特有の甘みを持ち全国的にはまだまだ幻といわれる馬鈴薯『インカのめざめ』の日本有数の産地です。 この『インカのめざめ』は芽が出やすい品種であり、このことが流通のデメリットとなっています。その課題に立ち向かい、1番美味しい時期にたくさんの方に食べていただきたいという思いでP-プラスを採用していただいています。 |
スイーツのような味わいが特徴の幕別の『インカのめざめ』
JA幕別町の管轄となる北海道中川郡幕別町は、帯広の東側に隣接するエリア。農業が盛んな十勝地方の中・南部に位置し、南北に細長い、特徴的な地形をしています。遠くに日高山脈を仰ぎ、十勝川をはじめとする河川が清らかな水を注ぎこむ平野部には、農家一人当たり40ヘクタール換算という、広大で豊かな農地が広がっています。稲作は行っていないため、どこを見渡しても、地平線まで続くような畑が広がっているといいます。小麦や長芋、甜菜、玉ねぎなど、多様な農作物が生産されていますが、中でも南米アンデス原産のじゃがいもを起源にする『インカのめざめ』の栽培に注力。国内栽培面積の約4割が、ここJA幕別町管内に集まっているといいます。
「『インカのめざめ』は、北海道農業試験場において原産地のアンデス地域で独特の食味と風味を有することから高値で取り引きされている小粒種を、日本の気象条件でも栽培できるように改良してきた品種です。平成13年(2001年)に品種登録されました。当時の担当者が、この特色ある馬鈴薯に注目。この地域の特産にすべく情熱を持って取り組んだ結果、今では“『インカのめざめ』といえば”幕別”というイメージが定着するまでになりました」というのは、JA幕別町 農産部 馬鈴薯生産販売課の寺下課長。作付面積について公的な集計がないが、種芋の配布量からしても日本一であることは間違いないであろうと説明します。
実は、この『インカのめざめ』は収穫から出荷の段階において非常に手がかかるのだといいます。
「一般的な馬鈴薯に比べてサイズが小さいため、収穫量も少なく、収穫時にハーベスタから零れ落ちてしまうこともあるため、それだけ人手が多くかかってしまいます。また、収穫後に低温貯蔵することで糖度が増していく一方、早生であるがゆえに早めに収穫することから、芽が出やすい品種なので、発芽を抑える工夫も必要になります」
発芽したからといっても、品質に影響がでるわけではありません。しかし、市場や消費者から見たら、芽が出た時点で印象が悪くなるのだとか。しかし、それだけ手間のかかる作物であっても、それに余りある魅力にあふれているといいます。
「先ほど、『インカのめざめ』は、低温貯蔵することによって甘み、旨味が倍増すると説明しましたが、その栗のような甘さの元になるショ糖が男爵イモの5倍含まれているので、まるでスイーツのような味わいになります」
現在は「インカのめざめを」より多くの方に知っていただくために、帯広競馬場の敷地内にある「とかちむら」の産直ショップや千歳空港内のショップで小分けにして販売しています。小粒な品種なので丸ごと調理しやすいことも魅力の一つです。シンプルに素揚げにするのが寺下課長のおススメの食べ方。煮くずれもしにくいのでカレーやシチューなどにも向いています。
味わいの熟成と発芽リスク抑制を両立する手段を模索
インカのめざめは、貯蔵すればするほど甘みはのってくるのですが、時間が経過すれば、それだけ発芽の可能性が増えていきます。発芽を恐れて、早めに出荷してしまうと、『インカのめざめ』特有の味わいを届けることができないというジレンマがあると言います。
「8月に収穫して、翌年の7月まで出荷を続けているのですが、春先になればなるほど、出荷元の北海道と出荷先の本州との間で気温差が大きくなり、一気に発芽が進んでしまう。味わいの熟成と発芽リスクを抑えるという、この相反する二つの要素をバランスよく保てる手段はないかと調査を開始しました」
取引のあった資材商社に声を掛けたり、寺下課長ご自身もインターネットで調査を進めたりと模索する中で、P-プラスに出会ったといいます。
「ホームページ上の資料を見ると、P-プラスが生産物の“呼吸量を抑える”という記述がありました。貯蔵中は1℃~2℃で貯蔵します。箱に詰めるときに作業場が10℃~20℃、そこからもう一度冷やし出荷し、その後また輸送中、市場と何度も温度変化にさらされます。その温度差が引き金となって芽が動くと仮定すると、それを呼吸量の調整で押さえることができるのではないかと直感的に感じました」
そこで、すぐにホクレンを通じて住友ベークライトに連絡。担当者と意見を交換した後、大田市場にある住友ベークライトの評価CSセンターにて、様々な温度帯を想定した試験を実施することになりました。
「私自身も評価CSセンターに足を運ばせてもらいました。そこでの試験の結果も良好でしたし、私たちが保有する貯蔵庫でも独自のテストをしてみて、まずまずの感触を得ました。もちろんこういった実験結果も大切ですが、やはり実際にお客様のところに届くときに、どういった状態にあるのかが重要です。ですから、お客様から正確に評価を得るためには、やはり“まずは、やってみよう”と、それからフィードバックをもらいながら改良を加えていこうと考えました」
決して幻ではない『インカのめざめ』を日本全国にお届けしたい
現在は、小売りの店頭に並ぶ個包装と、出荷用段ボールに使用する大袋の両方でP-プラスを採用。個包装に関しては特に問題はないが、大袋については想定外の課題も見つかったといいます。
「冷やした状態から常温の場所に移したときに『インカのめざめ』自体の呼吸量が増えるのですが、袋の中の酸素が足らなくなることで、中心部が黒く変色するという現象が見受けられました。それに対して、穴の数や大きさを変えながら呼吸量を調整してもらっている段階ですが、あらかた改善されていて、完成形に近づいている印象です」
寺下課長としても、“まだまだ、一番食べてほしい状態にある『インカのめざめ』を市場にお届けできていない”という忸怩たる思いがあるとのことで、それをクリアするためにも「P-プラスの鮮度保持力は不可欠だ」とおっしゃいます。
「幻といわれていますが、決して幻ではない『インカのめざめ』を日本全国にお届けしたい。そのためには、住友ベークライトのネットワークの中で、こだわりの農産物に興味を持っているバイヤーさんなどをご紹介いただき、販売のチャネルを増やしていければと思っており、そういったお力添えも期待しています」
住友ベークライトの営業担当の梅原は、「我々にとっても、このジャガイモ用P-プラスは今まで、これほど大規模にご採用をいただいた事例がなく、特に大袋に関しては、一から取り組ませていただいたという経緯があります。その中で、テストにも積極的にご協力をいただき、ようやくスタート地点に立つことができたのかなと感じています。P-プラスの鮮度保持効果は幻と呼ばれるような特産の青果を幻のままにせず、まだ口にしたことがない地域の皆さんにお届けする一助になると考えております。これらはスーパーなどのバイヤーの方や、市場にとっても大きな魅力となるはずです。そのような産地と市場の橋渡し役も務められるようにしていきたいと思います。インカのめざめ用のP-プラスフィルムについてはまだまだこれからブラッシュアップして進化させていきたいと思っているので、色々なご意見、ご協力をお願いします」と述べました。
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