茨城県西【ブロッコリー】
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春まっさかりの5月。新緑がまぶしいこの季節に出荷されてくる春ブロッコリーは、春商戦の目玉のひとつ。関東産地では2月の大雪で植え付け作業の遅れが心配されていたのですが、今年も4月後半から、茨城県西の野菜地帯から出荷される春ブロッコリーが、スーパー店頭や生協のカタログ販売の誌面を賑わせながら、無事、消費者の元に届けられています。
ブロッコリーはいま、周年にわたって生産・流通していますが、年間を通してみると冬場にピークを迎えます。寒さに強いブロッコリーの大きな特徴です。ところが、冬ブロッコリーが終盤を迎える3月までは潤沢に出回っているものの、4月~5月の春ブロッコリーの時期にはガタっと出荷が減ってしまいます。その理由は、春ブロッコリーは、年明けの厳冬期に植え付けされるために、生育環境が厳しいためです。
そんな貴重な春ブロッコリーの産地のひとつ、茨城県八千代町の茨城県西産直センターでは、ブロッコリー部会の15名の生産農家によって約10haもの作付けがありますが、栽培が難しいとされる春と秋のブロッコリーの代表的な産地といわれています。同産直センターは生協を中心にスーパー等への直接販売をしていますが、とりわけ高温期に向かう春ブロッコリーの品質が、バイヤーや消費者から高い評価を得ているのも特徴。
ブロッコリーは寒さには強い反面、温度が上がるとすぐ花蕾が開いたり黄化するなどの品質劣化が起こります。それに対応するために、同センターでは午前中収穫、搬入されたブロッコリーをすぐ真空予冷して低温貯蔵し、生協やスーパー側からの指定に応じてMA包装(P-プラス)による個包装やダンボール箱内袋での包装を施して出荷、流通させているのです。春ブロッコリーの時期だけでなく、10月からの秋ブロッコリーでも全く同様の品質管理をしていますので、消費者からは安心して指名買いができる産地です。
野菜類、とくに緑黄色野菜は健康にいいとされていますが、その代表選手がブロッコリー。消費者とりわけ主婦たちから強い支持があります。大型野菜を含む白色野菜に比べて、葉物や果菜類などの“色の濃い”野菜は、見るからに栄養分が豊富そうだからでしょう。そんな栄養豊富なブロッコリーをMA包装することで、健康に役立つビタミンCを保持できることは、最近では消費者もよく知るようになっています。それが、産地が積極的にMA包装を採用するようになった理由でもあります。
日本経済は、過去20年間という長い不況に見舞われました。そのため、消費者が食費などを節約する傾向にありましたが、どうやら健康志向だけは健在だったようです。卸売市場でのブロッコリーの入荷動向をみてみると、平成5年と25年の20年を対比すると、なんと入荷数量が7割近くも伸び、月ごとの入荷も確実に増えているのです。
市場への入荷が増大し安定してくると、使い勝手のいい緑黄色野菜の代表選手として、消費者からの支持も拡大し定着してきました。その背景には、生育期に天候条件に恵まれない春作、秋作ブロッコリーを品種改良や生産技術の改善に努力してきた、茨城県西産直センターなどの生産農家の熱意と創意工夫があったことは言うまでもありません。安定した生産と商品管理が、消費を創造していくという事実を忘れてはなりません。