2014年4月のP-プラス青果物
JA香川県【菜の花】

JA香川県【菜の花】

春の訪れを感じさせる野菜類の代表格といえば、やはり菜の花でしょう。とくに関東地方では春一番が吹き始める3月ごろに本格的な出荷期を迎え、4月に向けピークとなります。いかにも柔らかそうな淡い緑色の葉茎に、黄色い花が咲く前の蕾がついて、新緑、芽吹きといった季節性を具現化した、見ているだけで春の到来を知らせてくれる野菜です。

菜の花をまだ寒い時期から育てる促成栽培技術は、すでに江戸時代からあり綱吉のころも奢侈禁止令の対象になったほどの促成野菜ですが、その技術は千葉県で受け継がれ、東京市場にはいまでも6割が千葉県から出荷されてきます。

春の季節野菜として重宝され、一般家庭から業務用需要が一気に高まる菜の花の産地は、いまでは20以上にものぼりますが、他の産地からナノハナの名称で出荷されてきているものは、ほとんどがカキ菜、ポエム菜、アスパラ菜などの油菜科の類似品。その中で江戸時代から愛され千葉県で継承された、伝統的な「菜の花」を生産・出荷している数少ない産地のひとつが、西日本の有力な促成産地である香川県です。すでに40年もの生産の歴史があることは意外にも知られていませんが、見掛けも荷姿も千葉県産とほぼ変わらずに店頭販売されていることを知っている消費者は多いはずです。

香川県は、東京市場においては冬場を中心としたレタスなど洋野菜産地として不動の地位を築いていますが、その促成技術と鮮度保持技術にはかねてより定評があります。卸売市場や小売店からは、遠隔地でありながら近郊産地より鮮度が高い…とも評価されているのです。その香川県から出荷されている菜の花が、とりわけ〝鮮度〟が際立っているのには理由があります。

香川県産の菜の花は、その85%までが東京など京浜市場に出荷されています。さらに、京浜地区を経由して東北、北海道方面にも供給されています。こうした広域に流通する香川県産菜の花ですから、消費地に近いという立地にある近郊産地より、格段の鮮度保持流通が求められます。とくに軟弱な菜の花の葉は萎れやすく、せっかく蕾の状態で出荷しても時間の経過とともに花が咲いてしまいます。鮮度が落ち開花してしまうと、見栄えだけでなく食感、食味を落としますから、市場での評価が低下するだけでなく消費者からも敬遠されてしまいます。その問題を香川県は見事に解決しています。

まず収穫から消費地到着までの時間を短縮するために、前日に収穫・包装されたものを翌朝には集荷場に集め、午後には東京に向けて空輸して届けています。さらに、萎れや開花を抑制するために、11月下旬のスタート時から4月末まで終了するまでの期間、パッケージにMA包装(P-プラス)を採用しているのも大きな特徴です。期間中を通じてMA包装され、航空機まで使って輸送される菜の花は、この香川県産だけ。卸売市場、小売店そして消費者からも「香川産菜の花」が支持されるゆえんです。

日本は、過去20年にわたる景気低迷に見舞われましたが、周年供給野菜に比べて、季節野菜にはあまり不況の影響は見られませんでした。むしろ、沈滞している通常の販売のなかで、菜の花などの季節商材はメリハリがついて売れ行きは悪くありません。ただし、千葉産などで採用されている伝統的な裸結束(人形巻き)菜の花は、鮮度が落ちやすく単価も高いため、購入のリピート回数が減っていました。これに対応しているのが、香川県産が採用しているMA包装品(200g)です。値ごろで鮮度もいいという評価の理由です。

こうした流通、消費レベルでの支持を原動力として、嬉しいことに香川県産菜の花は近年、増産傾向だといいます。「今年は前年より1割以上も多い出荷増を見込んでいます」(JA香川県仲多度地区営農センター)。減産の野菜類が多いなか、実に頼もしい限りですね。