2014年3月のP-プラス青果物
雪国まいたけ【エリンギ】

雪国まいたけ【エリンギ】

キノコ類のなかで、もっとも新しいキノコが「エリンギ」です。日本古来のキノコではなく、イタリア、フランスなど地中海性気候地域が原産地。日本では、90年代に愛知県林業センターが、初めて太くて大きいエリンギの人工栽培に成功して、20年前から普及拡大したキノコです。原産地域ではもともと人気のある食用キノコで、フランス料理やイタリア料理などの定番食材になっていますが、日本では、ちょっとマツタケの食感に似ていることもあって、徐々に定着が進みました。

20年前までは日本人に馴染みのなかったこのエリンギが、いまや成長率ではトップのキノコとなりました。その要因は何だったのでしょう。日本を代表するマーケット、東京市場でエリンギの入荷動向をみてみると、過去10年で入荷量がなんと47%も増えています。入荷の特徴は、通常のキノコ類では最も入荷の少ない夏場と、最も入荷の多い冬場を対比させると、エリンギは主要キノコ5品のなかでは最も入荷量に差がありません。これは、季節に関係なく、年間を通じて安定して消費されていることを意味します。また、過去10年でキロ単価が3割近く安くなって、買いやすくなったことも大きな要因です。

こうした、近年におけるエリンギの急成長を考えるうえで欠かせないのは、㈱雪国まいたけの果たしてきた役割でしょう。舞茸の人口栽培を初めて成功させ、全国に供給ネットワークを構築した同社が、後発メーカーながらエリンギに参入したのが、ほぼ10年前のこと。年間1万トン規模の生産能力を有する大規模工場による、大量栽培技術を確立したのです。包装方法も、従来製品のトレーパックではなく、効率の高いピローフィルムを使ったライン包装。さらに、新潟県内の工場から毎日発送し、全国くまなく広域流通するエリンギの食味と鮮度を保持するために、MA包装(P-プラス)を採用しています。

小売商材としてのエリンギは、トレーパックなどで密封包装してしまうと、時間の経過とともに無酸素状態となって嫌気性発酵し「アルコール臭がする」というクレームが多発していましたが、機能性フィルムであるP-プラス包装品については、臭気に関するクレームは非常に少なくなったといいます。包材メーカーからの情報提供と同社の研究開発セクションによる試行錯誤の賜物です。

こうして、低コスト生産・流通と万全な鮮度保持流通している同社のエリンギには、他にみられない大きな特徴があります。それは「雪国まいたけのエリンギは甘い」という評価です。独自の菌種と培養資材を開発するとともに、低湿度の生産環境を作ることで、水分含有を抑えた凝縮した食味と、天然糖質であるトレハロースによる甘みが引き立っているからです。

いま、エリンギは年間を通じて消費されていますが、その食感はマツタケに似ているためか、なぜか秋にも需要が急増します。また、鍋物にはあまり向かないものの、シチューやトマト煮などの煮込み料理や焼き料理にはよく合い、やはり寒い季節に需要があります。しかしながら、成長しているとはいえ、まだ市場の入荷数量的にはシイタケの半分。この先エリンギが、シイタケを追い越しさらに数量トップのエノキダケに肉薄することができるとすれば、それは「雪国まいたけのエリンギ」は値ごろで買えていつでも美味しい、と評価する消費者からの支持によるものでしょう。