ご紹介
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10月、いよいよ本格的な秋の到来です。秋といえば、日本でもっとも気持ちのいい、美しい季節でもありますが、なんといっても“食欲の秋”であり“味覚の秋”に止めをさします。なかでも温かい鍋物や、香ばしい焼きサンマ、ちょっと奮発して焼きマツタケや土瓶蒸しなどなど、味覚、嗅覚を喜ばせるシーズンでもあります。そんな秋を代表する日本の食に欠かせないのは、旬を迎えた素材の食味を引き立てる、日本独特の調味料や薬味類でしょう。
さて、秋の季節料理に不可欠な薬味といえば、例えば、このシーズンにやはり旬を迎えるスダチです。日本の代表的な食酢柑橘であるスダチは、徳島県が誇る特産物。日本には、各県ごとに異なった食酢柑橘がありますが、全国の料理屋さんから一般家庭まで、スダチほどその独特の香りと食味が愛されている食酢柑橘はありません。
日本各地には、カボス(大分)を始めとして、直七(高知)、ヘベス(宮崎)、キズ(福岡)、ジャボン(広島)、ジャバラ(和歌山)、ユズキチ(静岡)、フクレミカン(茨城)、シイクワシャー(沖縄)など地方色豊かな食酢柑橘がありますし、数量的に最も多いのが輸入品であるレモンやライムです。しかし、日本の秋の味覚といえば、だれしもがまず想い起こすのがスダチの風味ではないでしょうか。
スダチが、いまや日本を代表する食酢柑橘として普及を果たした背景には、まず江戸時代の昔から秋の旬の食材、ツマ物として料理人に愛されてきたという歴史があります。それに加え、近年においては、この本格的なプロの食材を一般家庭に普及させるために、主産地である徳島市農協を中心とした様々な工夫や積極的なPR作戦が功を奏した結果でもあるのです。
庶民の味覚であるサンマの販売時期には、毎年、水揚げ港である気仙沼など東北地方や、消費地である東京・目黒で開催されるサンマ祭りなどで無料配布し、「サンマにはスダチが合う」というアピールを続けています。さらに10数年前からは、従来の1キロ箱出荷のほかに小売販売用の3~4玉入りの小袋販売にも着手して、一般家庭需要の喚起にも成功しています。
また小売用の小袋についても、当時、普及し始めたばかりのMA包装(P-プラス)を全国の産地に先駆けて採用することで、黄化や腐れ・萎れの発生もなくなり、購入する消費者だけでなく、商品管理の必要な小売店からも「ロスのない商品」という高い評価を得ています。これも、スダチの普及のための大きな成功要因になっていることは間違いないでしょう。
こうした徳島市農協など主産地が中心になった普及活動は、今年になって大きな成果となって現れました。スダチと讃岐うどんのコラボ商品とでもいうべき「スダチぶっかけうどん」の大ヒットです。この夏にはセブン-イレブンでの季節商品として人気を博しただけでなく、牛丼チェーンの「なか卯」でのメニュー化などを背景に、ネット販売でも人気商材にもなりましたし、さらに連動して、大手スーパーでは大玉品の1個売りなどの企画も成功しています。スダチの酸味と香りが、一般消費者にも認知され支持されていたからこそのヒットだともいえます。
スダチ産地の徳島市農協管内では、こうしたヒットに応えようと、いま組織をあげて生産拡大を目指しています。これまで生産者の高齢化などで生産面積が減少傾向にありましたが、徳島県とも連携して新規就農や企業進出による面積拡大を模索しています。日本の秋の味覚を守ろうという徳島県の努力を、消費者もそして流通・販売業界も大いに支援していきたいものです。