ご紹介
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ここ数年、首都圏のスーパー店頭などで茨城県産「アシタバ」をよく見かけるようになりました。卸売市場の担当者によると、茨城産は入荷が安定しているし、ロスも少なく品質もいいため、バイヤーが指名して仕入れているとのこと。「惣菜を製造する業者からも注文が来るようになりました」ともいいます。
「アシタバ」(明日葉)は本来、主に東京都下の伊豆七島に古くから自生する山菜ともいえる地域野菜です。非常にクセの強い野菜ですが、かつては野生の渡り鳥などと煮炊きすると美味しいとされ、いまでもカツオとの相性がいい、と八丈島などの名物料理になっています。
いまでは、八丈島産などのアシタバは東京市場に出荷され、主に関東地方を中心にスーパーの品揃え野菜として、ショーケースに年間ほぼ切れ目なく陳列されていますが、近年ではアシタバの持つ優れた機能性が評価されて、アシタバ茶やサプリメントなど健康食品としても売れるようになりました。
こうした優れた食品であるアシタバは、生産拡大が課題でしたが、耕作地の狭い島嶼部では限界があり、10数年前から本土の各地でテスト栽培が試行されていました。それまで、アシタバは寒さに弱いために、本土で栽培すると茎も赤くなって商品にならない、というのが定説でした。ところが、茨城県の有数の園芸地帯である鹿行地区では、新しい野菜生産に非常に熱心な農家が多く、難しいといわれたアシタバ生産を成功させたのです。
「最初は種子業者から勧められて、八丈島で比較的寒さに強いといわれる株を選抜した、という種子を導入してみました。始めは順調でしたが、圃場との相性の悪いものもあり、その後、何回か八丈島から種子を入れ直して選抜を繰り返してきました。ようやく安定した生育を確保できるようになりました」と経緯を語るのは、導入当初から北浦市アシタバ生産組合を取りまとめてきた北浦パッケージ、理崎代表です。
生産そのものが安定するとともに、北浦市産のアシタバは卸売市場やスーパーなどから「品質も飛躍的に向上した」という評価が定着します。また併行して、そこには北浦パッケージによる、集荷から出荷、流通にいたる一貫高品質保持システム構築へのチャレンジがありました。
北浦産のアシタバは、4月中旬から11月いっぱいまで、高温期をはさんで半年以上にわたって出荷されています。そのため、高温期の夏場の品質保持を基準にした、出荷体制が必要になります。
北浦パッケージでは、生産農家から夕方までに持ち込まれるアシタバを、まず水洗いのうえ粗選別しながら規定のサイズにカットし、コンテナに入れてから予冷庫に収納します。1~2日かけてしっかり水を切り品温を5℃程度まで予冷したのち、再選別しながらMA包装(P-プラス)して再度、予冷します。あとは、注文に応じて保冷車を使いながら出荷となるのです。2度の選別と十分な予冷、されに流通用パッケージに鮮度保持フィルムを採用するなど、その高品質保持システムは完璧です。過去10数年の試行錯誤から、アシタバの理想的な鮮度保持体制に到達したのです。
いまやアシタバは、モロヘイヤなど健康野菜と並ぶスーパーにおける重要な品揃え商品になりました。機能性が評価されての定着という側面もありますが、春から冬まで常に小売店の売場に高鮮度商品として品揃えされることで、消費者の買い物チャンスが増えてきたという点も見逃せません。その背景には、北浦地区の生産農家のチャレンジ精神と、北浦パッケージによる、消費者の手元に届くまでの鮮度保持、品質保証への取組みがあることは言うまでもないでしょう。