ご紹介
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今年の冬は、12月から各地に寒波が襲来して、厳冬ともいえる寒さです。そんな冬にはどこの家庭でも、寒さを吹き飛ばすかのように一家団欒で「鍋料理」を囲む機会が増えます。幸いなことに、今冬は11月までの天候は順調で鍋用野菜類は豊作となり、一家の主婦には大助かり。鍋用のキノコ類もよく売れています。
鍋用のキノコ類といえば、最近では最も利用頻度が高いのがエノキダケだといいます。大株で売られるようになったエノキダケは価格も手ごろで、鍋で煮込んでも独特の歯ごたえは絶品。シイタケやシメジを入れ忘れたとしても、エノキダケは欠かさないという人が多いようです。それもそのはず、いまやキノコ類のトップシェアを誇っているのは、エノキダケだからです。
エノキダケがこれだけ普及しているのは、偶然ではありません。いまや14万トンにも達しているエノキダケをトップに導いたのは、その4割を生産している長野県のJA中野市が全国の産地を主導して、生産拡大の達成と消費拡大を導いたからです。
エノキダケ生産日本一の産地である同JAは、10数年前に生産基盤の強化策の一環として最先端工場に転換しました。それによって年間3万トンから、稼働率が飛躍的に拡大して、170%UPもの生産増を達成。5万2千トン規模となったのを契機に、様々な販売拡大策を展開してきました。
卸売市場の卸会社や仲卸業者と連携しつつ、全国のスーパーなど末端需要者に直接営業して、年間を通じて同JAのエノキダケの売場を確保。夏場の不需要期には価格を下げて消費者に買いやすくするとともに、販売単位も従来の100g袋入りから200g、あるいは「一株物」という大型ロット商品の開発。従来の“真空包装”品から転換し、鮮度保持フィルム「P-プラス」を使った脱気密封包装品まで用意して、スーパーのPB商品化にも対応。いまやその商品アイテムが70を上回るといいますから、同JAの営業戦略の徹底ぶりが自ずとわかります。
こうした同JAの営業努力は、消費拡大という大きな成果をもたらしました。その大きなポイントが販売単位の大型化でしょう。シメジなどに比べて、煮炊きすると“どこに行ったか分からない”というほど存在感のないエノキダケでしたが、これがたっぷり使えるならまた事情は違ってきます。鍋物の具材でいえば春雨類の存在感に近づくのです。しかもエノキダケのシャキシャキ感は独特。鍋には欠かせない、という人が多いゆえんです。
また、かつての“真空包装”は、包装内の空気が少ないためにキノコがいわゆる“酸欠”を起す嫌気性発酵をする結果、嫌なアルコール臭がありましたが、いまや食味や鮮度保持を重視した脱気包装やP-プラス包装など採用して、“美味しいエノキ”を提供できるようになったのも、同JAによる創意工夫の賜物。同JAのこうした革新的なチャレンジに、他のエノキダケ産地も追従する結果をもたらしました。
同JAのエノキダケ普及拡大戦略は、美味しさアピールや使い勝手の良さの訴求だけにとどまりません。美容健康ニーズに対応して、エノキダケの機能性をアピールしています。同JAが開発した「えのき氷」は、エノキダケを煮詰めてペースト状にし冷凍した食品です。この食品が持つダイエット効果やコレステロールの低下、さらに花粉症の改善などの効果を、東京農業大学の研究者とともに実証。マスコミを通じて広報するとともに、各地で「えのき氷」を使った料理の講習会なども実施しています。
JA中野市は昨年11月、東京農業大学と共催できのこシンポジウムを開きました。同JAの阿藤組合長や、同大の江口文陽教授、音楽家のつんく♂さんが参加。きのこの機能性や安全性をPRし、消費拡大を呼びかけました。会場の東京農業大学キャンパスでは、きのこ汁のふるまいや、JA中野市オリジナルキャラクター「えのたんとキノコフレンズ」も勢ぞろい。愛嬌のある着ぐるみは来場者に大人気だったといいます。
「リーディング産地としての誇りと責任」…。JA中野市のエノキダケにかける思いが伝わってきます。