ご紹介
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天候不順だった4月も下旬をすぎて5月の連休になると、ようやく本格的な春本番。徐々に温度も上昇して、今年も“日本のグレープフルーツ”とも呼ばれる「河内晩柑」の季節が到来しました。その果汁分たっぷりのジューシーさと、ほのかな香り、種のないやわらかな食感の果肉をもつ河内晩柑は、柑橘類シーズンのしんがりを務める、いわば「真打」登場という感があります。ハウスミカンのスタートと重なったり、輸入品のグレープフルーツの最盛期にもぶつかりますが、出回りを待ちわびていた国産柑橘愛好者にとって、なくてはならない大切な柑橘です。
四国、九州地区の柑橘産地で広く栽培されている品種ですが、なんといっても本場は、その発祥の地である熊本県河内地区に近い天草市。春先から本格出荷を開始したJA熊本果実連から、全国への河内晩柑愛好者のもとへ季節の食味を届けていますが、そのなかでも今年、とくに注目を集めているのが天草市のJA本渡五和(ほんどいつわ)とJAあまくさ産の河内晩柑「あまくさ晩柑」です。JA本渡五和は昨年から、JAあまくさは今年から、河内晩柑のMA包装(P-プラス)で個包装された「あまくさ晩柑」が本格出荷されているからです。P-プラス個包装の商品化によって、従来の出荷期より1ヶ月近く長く7月まで供給することができるようになり、取り扱う小売店からも消費者からも大歓迎をうけています。
天草市は、冬期も一定以上の気温でほとんど降霜することのない地域での栽培が必要である河内晩柑にとって、最も栽培適地だといわれます。この品種は、5月に開花してから実に翌年の8月や9月まで実がついているという、柑橘類には珍しい特徴があります。そのため、樹に成らしたまま夏まで供給することが可能なのですが、JA熊本果実連では、花の咲く5月までに収穫することを指導しています。開花後に病気予防などのために使う薬剤が、成っている果実に付着することを防止し、「安心・安全」な商品を届けるための措置です。
しかし問題があります。4月下旬までに収穫される河内晩柑は、従来は低温貯蔵しても出荷は6月いっぱいが限界。腐敗などの発生率が高まるからです。そこで採用されたのがP-プラス包装。収穫直後に1個1個をP-プラス包装して常温貯蔵すると、最も消費者が欲しがっている初夏、7月までの販売が可能になったのです。熊本県の「安心・安全」追求の姿勢を、P-プラス包装技術がサポートするというみごとな連携プレーだといえます。
今シーズン、P-プラス個包装の「あまくさ晩柑」は約100トン。主に、中京地区の大手スーパーと、首都圏を含む中小のスーパーチェーンで販売されています。卸売市場からの要望も強いため、次年度からは数量を倍増させる計画だとか。JAの販売担当の立場からは、「P-プラス個包装の価値を充分に認識してくれる販売先への供給を先行させ、生産農家に有利販売を実感してもらうことで、増産のモチベーションになることが大切。先行した量販店での評価を基準に、卸売市場での拡販にもつなげたい」(JA熊本果実連・西山一成販売課長)と意欲的です。
スーパーのバイヤーたちの河内晩柑への評価と期待は、初夏の国産商材として輸入のグレープフルーツに勝るとも劣らない果汁分たっぷりな食味に加え、ビタミンCが豊富なのに、カロリー・糖質・脂肪が低く、疲労回復や二日酔いにも抜群の効果があるとされること。とくに、水溶性の食物繊維であるペクチンが糖の吸収を抑えてくれたり、リモニンが発ガン性物質を無毒化する酵素を活性化させたり、女性にも男性にも嬉しい優れた効果及び成分が含まれている、とされていることです。
そのためスーパーの中には、P-プラス包装によって販売が長期化した河内晩柑を、さらに季節の商材として定着させるために、今年、「“あふれる果汁”黄潤(きじゅん)みかん」というPBを創った事例もあり、この春、熊本産河内晩柑は話題満載です。