ご紹介
10月から11月にかけて、日一日と秋が深まる「中秋」。日本の最も美しいこの時期が、千葉県鴨川市から出荷される極晩生の在来種枝豆、「鴨川七里」のハイシーズンとなります。古くから地元では「七里」と呼び習わされてきたこのエダマメ、その芳醇な香りと味が特徴。「香りが七里にも広がる」と言い伝えがある幻の枝豆ですが、3年前に地元農家の自家採取種から選抜した原種を、JA、農林振興センター、農業試験場などの支援で普及拡大が始まりました。
その推進母体は、栽培農家が結集して結成された「鴨川七里を育てる会」(鈴木栄一会長)です。地域の特産品に育てよう…と、地元の商工会や旅館組合などからの期待を一身に担って商品化されたこの「鴨川七里」枝豆。「鴨川旅行の思い出にいかがですか?」と、10月から11月上旬にかけてのキャンペーン期間中、鴨川市の旅館、ホテルの宿泊したお客様は、摘み取り会場の圃場に案内され、この「鴨川七里」を無料で詰め放題のサービスを受けられます。
「地元の宝で農村を豊かに」「多くの人に喜ばれる物づくりを」を合い言葉に、南房総の温暖な畑で秋の陽光を浴びながら、丹誠込めて栽培されている「鴨川七里」。現在、東京・大田市場などを経由してクィーンズ伊勢丹などで販売されていますが、その高い品質を守るために様々な対応策を持っています。市、試験場、農林振興センターなど行政の協力を得ながら、種子管理は「育てる会」が、肥培管理指導から販売面、全体のとりまとめ役としてJA安房鴨川支店が事務局を担います。また、販売の当初から「七里」独特の香りと食味を保持するために、全量でMA包装(P-プラス)を採用しているのも特徴です。
生産面積1.7ha、生産者は21名、収穫開始は10月中旬で約1ヵ月程度の販売期間しかありませんが、使用農薬など栽培履歴は「青果ネット」によって公開されており、露地栽培の「秋の枝豆」を強調して、紅葉をあしらったパッケージ荷姿、1袋(250g)の店頭販売価格は500円前後。高い付加価値が認められています。
その一方で、地域特産品を地域の人々からの支援でさらに大きく育てよう、という試みも同時進行しています。そのひとつが市民らにふるさとの枝豆を味わってもうために企画した「枝豆オーナー制」。今年は50a・220区画のオーナー圃場は、募集と同時に満杯状態という盛況ぶりを見せています。さらに「育てる会」では、乾豆(大豆)を使ったきな粉や味噌、さらに豆腐や納豆など加工品の開発にも積極的。地元の製造業者、小売店から婦人団体まで、おおぜいの参加を得て、ユニークな味わいの関連食品も続々登場しています。指導に当たっている安房農林振興センターでも「県の小規模農家支援事業を活用し、鴨川七里のブランド化に向け、引き続き支援していきたい」と、こちらも意欲的。「いわゆる畦マメとして受け継がれてきた、在来種ならではの栽培面の難しさがあるが、近隣の晩生在来種にはない独特の香りや品質には商品性はあり、新しい特産品としてJAとしても全面的な支援体制を敷いている」とは、JA安房鴨川支店の飯塚英彦支店長代理。
「鴨川七里を育てる会」の鈴木会長は、「えだまめ「鴨川七里」は鴨川市の農家で「香りが七里広がる」と言われ、育て継がれてきた在来種です。鮮度保持フィルム(P-プラス)を袋に用い、そのままの美味しさを届けています。どうか地元に伝わる香り豊かで上品な、伝統の味を御賞味ください」とアピール。今年の販売を前には、鈴木会長らが市役所を訪れ、片桐有而市長に販売開始を報告しましたが、試食した片桐市長は「名前どおりで香りが良く、甘味もある。買った人もうまいと納得するだろう。鴨川の特産品になること間違いなし」と太鼓判を押しています。
最近の晩生枝豆のブームの中、この「鴨川七里」は頭ひとつリードする期待の枝豆として、地域からも消費地からも支援の輪が広がっているようです。