2010年10月のP-プラス野菜
京都府【紫ずきん】

ご紹介

9月に入って、秋風が吹く頃になると待ち遠しいのは、"京の紫ずきん"の出回り…。などと聞くと、なにやら御所の女房の道行きを連想したり、それとも、はんなりした京の和菓子の名前か、とも思ってしまいますが、これは知る人ぞ知る、わが国を代表する晩生のエダマメの名称。しかも、あの「丹波の黒豆」をエダマメ用に改良した品種なのです。

京都府が育成したこの品種が世に出たのが平成8年のこと。その初お目見えの当初から、"丹波の黒豆のエダマメ登場!"と大きな話題になるとともに、その大粒で紫がかった独特の色や、しっかりした濃い旨みが評価され、たちまち人気商材になるというデビューを飾りました。そしていまや、9月上旬から10月中下旬にかけての「紫ずきん」の出荷時期には、デパ地下や高級スーパーを中心に定番商材として、また秋の風物詩として定着し、毎年9月になると「紫ずきんはまだですか?」との問い合わせが殺到するほど、出荷を待ちわびる人も増えています。

「紫ずきん」にそれほど熱烈なファンがいるのには、いくつかの理由があります。現在、京都府下での栽培面積は63haと人気品種にしては小規模ですが、その栽培農家数は3作型で延べ1228戸と、多くの農家によって文字通り"手塩にかける"ように栽培されています。京都府独自の品種であるため、JAによって種子管理され毎年、農家に配布されており、全量がJA系統共販されるという完全な生産出荷管理下で商品性を守っていることが、まず第一点。

現在、生産される約250tの「紫ずきん」は、秀品は200gで優良品は400gパックされていますが、その合計出荷量約100万パックはすべてがMA包装(P-プラス)されていることが第二点目です。独特の食味と外観を持つ高級品種であり、その食味や品質内容を保持するために、本格的出荷が始まった平成10年から採用しています。そのため、ネット包装だった当初は地元・京都にしか供給できなかった「紫ずきん」が、大阪地区を始めとする京阪神地区だけでなく、京浜地区以遠まで供給圏が広がりました。「いわば全国区のブランド品として認知してもらえるようになったのは、全国に先駆けてMA包装を採用して広域販売が可能になったおかげ」(JA全農京都農産部園芸課田中淳平氏)だといいます。

「紫ずきん」はいまでこそkg1000円もするほどの超ブランドに成長していますが、その成功は一朝一夕に成ったものではありません。原種管理から種子管理は完全でも、生産農家が非常に多いために目揃い会の頻繁な開催、JAでの検品の徹底などで規格を守ってもらうのはもちろんのこと、各農家での選別から予冷、農家単位でMA包装用のヒートシーラーを導入するなど、一貫した品質管理体制を確立させています。

また消費者への直接アピールの手段として、「ふるさと産品協会」などとも連動して実施する、店頭での試食宣伝にも余念がありません。昨年は1ヶ月余の短期間に延べ40ヶ所で開催するほどの力の入れようです。今年度もさらなる内容充実を目指していますが、とくに最近、岡山県や千葉県などから"黒豆エダマメ"が出荷されるようになり、"黒豆の本家"である京都が負けてはいられない、という思いもあるようです。「食味やコク、豆の大きさなど、他産地のものとは充分に差別化できると思っていますが、"勝って兜の緒を締めよ"という気持ちで望みたい」(同田中氏)。

9月になると京都では、様々な秋の食材を使った京料理が楽しめますが、もちろん、最近では「紫ずきん」を使った料理も。「紫ずきん、おひとつどうどすか?」