ご紹介
暑さ真っ盛りの8月。野菜類では、エダマメが中盤から後半戦に突入します。この時期、マーケットの関心はもっぱら「茶まめ」の動向。過去10年で、8月の「茶まめ」は消費者にすっかり定着ているからです。しかも流通業界が待っているのは、”大御所”といわれる山形産の「だだちゃ豆」の前に出荷されてくる「新潟茶豆」なのです。
新潟県産のエダマメは、6月中旬から”白毛種”からスタートしますが、なんといっても本番は7月下旬からの「新潟茶豆」と、8月中旬から9月いっぱいまで出回る「新潟あま茶豆」です。「新潟茶豆」の特徴は、旨みが最も乗る「8割の実入り」で収穫されている茶豆です。パンパンに実を入れないのはちょっともったいない気もしますが、それが「味」を重視するエダマメ農家のこだわりなのです。それに続く「新潟あま茶豆」は、新潟茶豆より香りは控えめですが、甘味が強いことから「ちょっと濃い目の味が恋しくなる、お盆後の季節に合う」というのが農家からのおススメ。
新潟県で生産出荷されるエダマメは、その7割が「茶豆」ですが、ほとんどがその昔に山形県からタネが伝わった在来種として、長く県内の消費者によって愛されてきました。そのため、現在でも新潟県民にとっては「エダマメといえば茶豆」といわれるほど、全体の6割以上が地場生産・地場消費されています。
新潟県民の茶豆の食べ方は豪快そのもの。山ほどゆでて笊に盛り、一家揃って、仲間同士で盛大に食べますし、あまり加工して貯蔵するのではなく、季節が来るといっせいに旬の味を楽しむのが独特の食文化だといわれます。
これほど茶豆にはこだわりのある県ですから、東京などの消費地への出荷に際しても、新潟茶豆の味をより引き立てるための収穫適期があり、そして包装形態もMA包装(P-プラス)を使って鮮度・食味保持に気をつけているのです。だから消費者の中にも、最近の”茶まめ風味”のものではなく、新潟茶豆こそがエダマメ、という熱烈なファンがいるのです。
さて、最近のエダマメ事情を東京市場の入荷動向からみてみると、平成17年に入荷が急増して7千トンを突破し、単価を2割以上下げた以降は7千トンを割り込んでいますが、全体としては漸増傾向にあります。入荷は6月から急増して8月がピーク、9月、10月にかけて入荷は激減するという典型的な季節商材ですが、近年の特徴として、スタートの4月の入荷は減少する傾向にある一方で、終盤に向う9月と10月の入荷は確実に増えています。茶まめ系統の品種の入荷が増加していることと、それに連動して晩生の青まめも復権してきたという面もあります。
こうしたエダマメの出荷時期の後退化は、産地の意識が、早出して高く売るというメリットよりも、食味本位の出荷を心がけて消費者に喜んでもらおうという、本来あるべき姿にシフトした結果です。
その「食味本位」の傾向をもたらしたきっかけは、新潟茶豆と山形のだだちゃ豆の存在ですが、そんな動きを支援しているのは、鮮度・食味保持効果の高いMA包装形態が標準商品になってきたことだ、というのが流通業界の常識になっています。
エダマメ全体のマーケットは、茶豆が全体を引っ張り、これによって作りやすい”茶まめ風味”の湯あがり娘など新品種が普及する余地が生まれ、さらに、超晩生でコクのある食味が特徴の秘伝など、青まめ系の在来種の復権も誘導しました。
エダマメは、スタートの埼玉、それを引き継ぐ群馬などの、ロットのあるシーズン前半の産地は依然として健在ですが、そこ以降の「食味の本番」を受け持つ新潟県を中心に東北にかけての産地が育ってきて、「秋のエダマメだっておいしい」というコンセプトを広めています。
さあ8月。その「新潟茶豆」の本番です。新潟県民をまねて、笊に大盛りにして食べましょう!