2010年6月のP-プラス野菜
広島ゆたか産・三原せとだ産【レモン】

ご紹介

安心安全な国産農産物にこだわる消費者が増えてきたことで、国産レモンの生産量も年々増加しています。増えているといっても、年間5万t前後のレモンの輸入量に対し、国産はその1割もないのが現状です。
レモンの需要は、一年中コンスタントにありますが、特に消費が増えるのは夏場です。輸入レモンは、それに合わせて南半球産を中心に入荷量を増やして来ます。しかし、国産レモンは、露地の収穫・出荷が終わる5月一杯でほぼ販売を終了し、夏の需要期には、ほとんど供給出来きていませんでした。夏に国産レモンを販売したくても「貯蔵技術がない」これが国内産地共通の悩みでした。

「レモンを周年供給したい」という長年の夢を現実の物にしたのが、「大長」ブランドのJA広島ゆたかと「せとだ」ブランドのJA三原です。これまで国産の空白期間だった夏場に、レモンをMA包装(P-プラス)で個装して貯蔵・出荷することで、念願だった「国産レモンの周年供給」を可能にしたのです。

「これまでスーパーや生協から、夏場にも出荷できないのか、と再三要望されて来ましたが、やっとそれが可能になりました。品質的な評価も高く喜んでもらっています。」とJA担当者。

国産レモンの故郷と言われる、JA広島ゆたか「大長」(大崎上島、大崎下島、豊島)とJA三原「せとだ」(生口島、高根島)は、どちらも瀬戸内海に浮かぶ島々からなり、温暖・小雨の瀬戸内海式気候を生かし、古くからレモン栽培に取り組んで来ました。また、美味しいミカンの産地としても全国的に知られています。この二大産地がけん引役となり、広島県は国産レモンの約60%に当たる4,300tを生産する日本一の産地となっています。
広島県では、日本一の“広島レモン”をさらに強力に推進すべく、レモンプロジェクトを立ち上げ、平成25年産生産量:1万トンを目標に、新規植栽を含め生産規模の拡大を図っています。また、今まで輸入レモンに独占されていた業務需要への対応も始めており、今後、広島産のシェアを高めていきたいと考えています。

ただし、日本一を維持し、レモンプロジェクトを成功させるためには、単に生産規模の拡大だけではなく、周年供給体制の確立がカギとなっています。これまでの国産レモンの販売は、8月~9月がハウス栽培、続く10月~翌年5月までが露地栽培という流れで、レモンの最大の需要期である6月~7月は国産の端境期に当たっていました。
両JAでは、このスキマを何とか埋めようと、貯蔵技術を含めて様々な検討と試験・研究を繰り返して来ました。そんなとき出会ったのが、MA包装技術でした。それは、4年前のことです。

柑橘の一般的な貯蔵方法である冷蔵方式では、腐敗などロスが出て夏場の販売は不可能です。かといって輸入品のように防カビ剤を使うわけにはいきません。そこに「密封包装して貯蔵する」ことができる包材「P-プラス」と出会ったのです。それは、想像をはるかに超える出来事だったといいます。

メーカーとの連携で貯蔵、流通試験を重ね、長期貯蔵に適する体質の強いレモンは1月に収穫したものであることを突き止め、その果実を選別、個包装し貯蔵した後、そのままの形態で出荷、店頭販売するといった独自のノウハウを確立しました。一昨年から試験販売をスタートしたところ、市場、スーパー、生協からの評価は合格点でした。

今年の広島県産P-プラスレモンは、6月~9月までの期間、約130トンの出荷・販売を計画しています。まだまだ、レモンの果実生理をより深く解明し、ロスを軽減させる技術を探るべく、試験場やメーカーと連携して試験・研究を継続しています。

この夏場に出荷できるP-プラスレモンは、露地に比べてかなり高い単価が取れるとあって、レモン農家の生産意欲は高まる一方だといいます。

スーパーや生協にとっても、最需要期の夏場に体質のしっかりした国産レモンを熱望していただけに、「もっと増やしても充分売れる」と太鼓判。今年は小売店をはじめ取引先からの問い合わせや引き合いが増えるなど、マーケットからの強い需要を裏付けています。

「品質に絶対の自信を持てるレモンだけを供給していきたい」というJAの姿勢は、これからの国産レモンの明るい将来を保証するものでしょう。