ご紹介
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本格的に、電気自動車の時代を迎えつつある中、住友ベークライトの産業機能性材料が注目を集めています。 |
総力をあげて自動車業界と向き合う決意
――まずは、チームの紹介からお願いいたします。
兼原: | 私たち産業機能性材料研究所 研究部 基盤製品次世代チームは、ポリカーボネートや塩ビなど、様々な熱可塑性樹脂の製品開発をしております。絶縁材などの難燃機能化、耐候性の付与、真空成形性の向上、光学機能の付与など研究しております。 現在は、SDGsへの取り組みの一つとしてリサイクル原料に関する研究開発も強化しています。絶縁材の開発については、難燃性だけでなく、耐トラッキング性の求められる高電圧への対応、EV車への適用などのトレンドを意識して、取り組みに注力しています 。 |
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産業機能性材料研究所 研究部
兼原克樹
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産業機能性材料営業本部 機能性材料営業部
森田和成
森田: | 私は営業ですが、元々は兼原と同じく、研究所に勤務しており、絶縁材などの開発を行ってきました。 私の所属する産業機能性材料営業本部では研究部出身の営業も多いのですが、それだけお客様との会話の中で専門性が求められていると認識しております。 |
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製品の特長
――それぞれの製品の特長についてご説明ください。
❚ 絶縁用ノンハロ難燃ポリカーボネートフィルム(サンロイドエコシート®ポリカ)
阿部: | サンロイドエコシート®ポリカは 、ポリカーボネートを基材とした製品で、厚さは0.05mmから0.83mm、難燃性の規格であるUL V-0、VTM-0を取得しています。 当社からは、巻物とカット品の形で販売しています。商流の加工メーカーさんで抜き、曲げ加工をしていただきます。 最終的な用途としては、家電、OA機器などのあらゆる電気製品になります。例えば、パソコン、プリンターの回路基板周りの絶縁、パワーコンディショナー等の電圧が高くなる部分への接触防止カバーがあげられます。最近は車載用の電源周りへ参入するためにマーケティングを進めています。 当社材の優位性は、ポリカを基材とするノンハロ難燃絶縁シートとして唯一(自社調べ)、UL規格で耐トラッキング性600V以上(CTI ランク 0)を取得している点にあります。 |
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産業機能性材料営業本部 機能性材料営業部
阿部正和
この絶縁物のトラッキングの起こりにくさにより高電圧がかかったときのインダクタンス(サージ電圧)を低減することにより、電圧を安定化することができます。
特に近年は、小型化や軽量化の需要が強い電気自動車分野における拡販を目指しているところです。電気自動車の分野では、電源装置や高電圧部品において沿面距離の短縮が可能になり、設計の自由度が増し、その結果小型化に寄与します。
もちろん難燃性においては競合材があります。しかし全製品に帯電防止処理が標準仕様としていること、そして、そこに耐トラッキング性600V以上と真空成形に対応するという要素が加するという要素が加わると弊社製品だけが残ります。
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森田: | この製品は、2000年にノンハロの難燃ポリカとして上市した業界初の商材です。当時、ダイオキシン問題が表面化しはじめた時代で、まだ塩ビなどが使われていました。当初は高価な製品でしたが、環境対応品として、採用いただきました。 最初に量が増えたのは、テレビがブラウン管から液晶に移行するタイミングです。薄型テレビに対応する電源基板がA3サイズ、A4サイズ程の大きさになる中で、基板と周りの金属が接触しないように絶縁材としてご採用いただきました。 さらに兼原のチームが開発を進め、耐トラッキング性600V以上を有するグレードを上市しました。家電、OA機器などの電気製品は100Vから電圧を落として使用されますが、電気自動車や産業用途では、400V以上の高電圧となり耐トラッキング性が必要になってきます。 現在、電気自動車市場が急速に伸びており、耐トラッキング性を有する絶縁材の需要が高まってきています。電気自動車ではコンバーター等の電源装置やバッテリーの小型化、薄型化が求められ、絶縁材については、耐トラッキング性の他、自由な形状に加工できることが求められてきています。そのためには真空成形など後成形ができることが優位です。 |
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――薄い樹脂材料は製造が難しいが、需要が増えてきたということですね。
森田: | そうですね。そもそも加工が難しい薄い樹脂の真空成形に対応する加工メーカーさんが少ないです。多くは、お盆やトレー、ブリスターパックなどの汎用品の簡単なもので、工業製品や自動車関係の部品などの複雑な成形に対応しているところは、まだまだが少ないのが現状ですので加工を担う企業と一緒に知恵を出し合っていきたいと思っています。 |
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❚ 特定波長制御技術(超多層)
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産業機能性材料研究所 研究部
草野大樹
草野: | 特定波長制御技術とは、樹脂の層の厚さをコントロールすることで特定の波長を透過・反射する金属を使わずに反射を得ることができる技術です。樹脂のナノオーダーの層をいくつも重ねて反射光を得ています。金属を使用していないので電磁波を透過する、つまり中身は見えないけれども必要な無線信号は通すことができ、各種センサー類への展開を進めています。 超多層フィルム自体はとても薄いため、様々なシートに貼り合わせることができます。貼り合わせたシートは熱成形ができるので、三次元成形が可能であり、自社生産の偏光板と組み合わせることでより高機能な偏光板を提供することが可能です。車載向け、アイウェアとして偏光サングラスをはじめ様々な場所への展開を期待しています。 このような特定波長反射などナノレイヤーを使った製品は他にもありますが、非結晶性の樹脂で設計している点において、当社技術に優位性があります。 |
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❚ 低反射ポリカーボネートシート(モスアイ)
草野: | こちらの低反射ポリカーボネートシートは、先ほどの特定波長制御技術とは逆に、反射を抑える機能を持つ製品です。 ポリカーボネートの表面に微細加工であるモスアイ構造を持った構造を付与することで、反射を抑制しています。 モスアイとは、文字どおり蛾(Moth)の眼(eye)を真似て反射防止の目的で作られた構造の事です。反射を抑制する微細構造を表面に付与することで映り込みがしにくくなるため、視認性が重要視されるディスプレイ周りやセンサー関係など反射光の抑制が求められる用途に展開できると考えています。また表層樹脂を自社で独自設計できますので、耐候性、耐久性といった機能の付与など行えることが強みといえます。 |
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森田: | 一般的にモスアイ構造は触れることで構造が壊れ機能が失われやすく、手などの触れる部分で使うことができません。当社製品は表面が崩れない耐久性、耐候性を実現できる処方になっているのが一番のポイントです。 |
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高橋: | センサーなどの用途で想定される課題として、屋外で使用の場合、雨天時などに表面に水滴付着し光学特性が低下するということがあります。これは水滴によって光が乱反射し検出方向にずれが生じることで発生します。 モスアイ構造には水滴が付着しないほどの撥水性も期待でき、数多くの用途への広がりを目指しています。 |
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産業機能性材料研究所 研究部
高橋克彰
後編では前編でご紹介した商品の自動車業界への適用の現状、これから目指している近未来の展望をご紹介いたします。お楽しみに。
インタビュー:伊藤秋廣(エーアイプロダクション)