強固な財務基盤を維持しながら、次の時代に向けた積極的な投資で事業の拡大に挑戦します
2022年度の業績の振り返り
取締役 常務執行役員
平井 俊也
2022年度の業績は、当社製品の販売数量は減少したものの、売上収益では過去最高を達成することができました。販売数量が減少した要因としては、新型コロナウイルスによる中国のロックダウンや巣ごもり需要が一段落したことで、スマートフォンやパソコンなど民生機器の需要が落ち込んだこと、ウクライナ情勢や半導体不足による自動車生産の回復の遅れといった事業環境の悪化が挙げられます。一方、原料やエネルギー価格の上昇分の売価転嫁が進んだことや円安などの影響が、売上収益の増加につながりました。
事業利益は、半導体関連材料や高機能プラスチックの数量が減少したことに加え、海外拠点の人手不足を背景とする人件費増加などの影響を受け前年と比べて減益となりましたが、クオリティオブライフが堅調に推移したことなどもあり減益額を最小限に抑えることができました。
親会社の所有者に帰属する当期利益では、関連会社からの受取利息の増加などの効果があり、過去最高額となる203億円を記録し、3年連続の増益となりました。激しい環境変化の中で確実に利益を積み上げることができたのは、当社グループが状況に応じた対策をワールドワイドで機動的に実施してきた成果だと考えています。
売上収益 | 2,849億円 |
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事業利益 | 254億円 |
営業利益 | 248億円 |
親会社に所有者に帰属する当期利益 | 203億円 |
ROE | 8.4% |
中期経営計画の進捗
2021年度からスタートした中期経営計画の業績目標は、当初の目標値を初年度で達成することができました。そこで2022年度に、売上収益3,000億円、事業利益300億円という新たな数値目標を設定しました。「SDGsに即し、機能性化学分野で『ニッチ&トップシェア』を実現、事業規模の拡大を図る」という基本方針のもと、新しいビジネスモデルへの挑戦、組織カルチャーの進化を目指し、DXの推進、SDGsへの貢献に注力してきました。その結果、2023年度は、売上収益、事業利益、当期利益ともに過去最高となる計画を立てています。
サステナビリティ情報の開示は、企業の行動指針としてさらに重要性を増しています。2023年4月にサステナビリティ推進部を設置し、企業理念と部署別の方針の整理や体系化を進めています。再生可能エネルギー由来の電力の拡大や、太陽光発電設備の増設、新技術を検討するなど、グローバルにカーボンニュートラルへの挑戦を継続していきます。
また、一層の困難が予測される人材確保の観点からも、多様性を尊重し、人的資本価値・人生産性の向上を目指し、そのために必要なDXの推進をはじめとする投資を進めていきます。
2023年度の業績見通し
2023年度の連結業績は、売上収益2,950億円、事業利益 285億円、当期利益215億円を見込んでいます。今期は、2022年度後半の需要減速が続いているものの、市況は徐々に回復するとみています。期初には売上収益の確保がまだ難しいと思われるため、需要の回復に遅れをとらないように生産体制を整えながら、緻密なコスト管理で利益確保に努めます。
また、新製品の開発や新用途、新顧客の開拓の早期実績化を、これまで以上に追求していく必要があると感じています。
財務戦略の基本方針
強固な財務基盤を堅持し、安定した資金運営を前提に事業を進めていくことが最も大切だと考えています。当社グループの機能性化学品は、開発期間が長い上、自動車産業をはじめ電気・機械産業など、非常に高い信頼性、安全性、長期的な安定供給が求められる分野で使用されています。こうした中で、強固な財務基盤を持つことはお客さまの安心材料となり、戦略的で長期的なパートナーシップの構築には欠かせません。
一方で、当社グループの発展のためには、次の時代に向けた投資を積極的に行っていくことも必要です。先に述べたサステナビリティ推進に関する投資や事業拡大、M&Aについては、タイミングを逃すことなく前向きに取り組んでいきたいと思っています。中期経営計画の目標として掲げているROE10%を目指し、より収益性を高めてまいります。
株主還元方針と株主・投資家の皆さまへのメッセージ
株主還元は、安定的かつ継続的に実施するという従来の方針に変わりはありません。具体的には、今後も配当性向30%以上を目安にしたいと考えています。2022年度は業績が向上したことから、1株当たり中間配当60円、期末配当70円、年間配当130円と、2021年度と比べて年間20円の増配を実現できました。2023年度はさらなる業績の向上を見込み、1株当たりの年間配当を140円とし、10円増配する予想を2023年4月24日付で公表しています。
3年連続の増配に加え、2023年5月には自己株式取得も行い、株主還元を図ってきました。一方、当社グループの企業価値向上と発展に寄与するM&Aは積極的に進めていきたいと考えています。M&Aは中長期的な視野での戦略的投資と事業拡大による成果を、株主・投資家の皆さまに還元させていただくことを願っての施策であることをご理解いただければ幸いです。
さまざまな環境の変化にも、機敏に、柔軟に対応しながら、社会に不可欠な製品・サービスを創出し続け、ステークホルダーの皆さまの期待を超える「未来に夢を提供する会社」を目指してまいります。引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。
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