先月、第3回MPS（Microphysiological system）ワールドサミット（MPS World Summit、6月10-14日）に参加してきました。第1回はニューオーリンズ、第2回はベルリンでの開催で、今回はシアトルの国際会議場でした。

MPS World Summit は比較的新しい大会ではありますが、今回は37カ国から約1,000人の参加者、口頭発表134件、出展企業96社、ポスター発表665件と、開催ごとに規模が拡大しています。

特にMPSに対する製薬業界、化粧品業界、食品業界などからの関心が以前よりも顕著に増加している印象を受けました。また今回の大会には私たちを含むAMED-MPS第2期事業に参加している多くの日本企業も参加し、日本のMPSデバイス、計測機器、創薬支援サービス等の実力を世界に示す貴重な機会となりました。

今回の大会では、私たちは新製品であるオンチップポンプ型多臓器MPS「バイオステラ™ プレート」と心筋収縮測定MPS「マイオフレックス™プレート」を海外で初めて出展しました。「バイオステラ™プレート」は、スターラポンプ駆動のオープンプラットフォームMPSで、複数の臓器細胞の共培養が可能です。薬剤の効果、毒性を予測するモデルや薬剤スクリーニングのニーズが高まる中、様々な臓器を簡単に連結できるこのデバイスは、多くの来場者から高評価を得ました。

「マイオフレックス™プレート」は、ヒトiPS細胞心筋細胞を用いた三次元心筋組織構築・収縮測定用デバイスで、医薬品による心筋収縮障害を予測するモデルとして高い関心を集めました。３日間の製品展示ではたくさんの方々に2つのMPSプレートを手に取っていただき、ご意見や期待の言葉を寄せていただきました。当社の新製品を世界にPRでき、またほかの参加企業やアカデミアの先生方とも情報交換できて、大変実りの多い大会となりました。

今後、AMED協力研究機関とアプリケーション例の開発を加速させ、来年ベルギーのブリュッセルで開催される第4回の大会では具体的な使用例を紹介したいと思います。これからも高いユーザービリティのMPSプラットフォームを提供することで創薬、化粧品また食品研究に貢献できるよう一丸となって取り組んでまいります。皆様のご研究などの一助になりましたら幸いです。

今回はScientific Reportsに発表された論文：Hypoxia inducible factor 1α promotes trichogenic gene expression in human dermal papilla cellsをご紹介します。本研究では、男性型脱毛症（AGA）のメカニズムに関して新しい発見が報告されるとともにAGAの治療に向けた新たなアプローチが提案されました。

髪の毛の成長に重要な役割を果たす毛乳頭細胞（DPCs）の働きと低酸素誘導因子HIF-1αの関連性が明らかにされました：AGA患者の頭皮組織おけるHIF-1αの発現は、健常者に比べて低く、毛包の発育に影響を及ぼす可能性があることが示されました。HIF-1αを高レベルで維持、または標的とすることで、毛髪再生や脱毛治療が有効である可能性が示唆されています。

本研究では、in vivoの環境を再現するためにPrimeSurface^®96Uプレートを用いた毛乳頭細胞の3D培養が行われました。3D培養により、HIF-1αの発現が抑制されたDPCスフェロイドで毛髪誘発遺伝子の発現が低下することが確認され、HIF-1αの重要性が強調されました。

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